押尾コータロー:ドラマティック

都心とはいえ、僕の住まいは朝晩ほぼ静けさに包まれ、よく眠れる環境にある(ただし、単に寝るだけの環境を欲したものだから日当たりの悪いことだけが難点)。耳を澄ますと近所の小さな子どものおしゃべりとともに今頃になると虫の声が聞こえてくる。つい先頃まで、蝉の声だったのに、である。
季節の微妙な移り変わりを直接感じながら、動物や植物、そして大自然が本当にありのままに生きていて、彼らは特別にカレンダーなど持たないのに、正確な体内時計なのかどうなのか感覚で大地の状況を察知し、自ずとそれに対処しているんだなとあらためて確認し、少しばかり感動を覚えた。
ありのままに生きにくい人間は悩みや不安を抱えがち。お金のこと、健康のこと、そして人間関係のこと・・・。それそのものが人間に与えられた業であるなら、それを乗り越えるよう日々努力しなきゃいけないのだけれど、わかっていてもついつい逃げたくなるのも人間の性。

本日、合気道仙元館の演武会のお招きを受け伺った。
最後に、合氣道親和館の井上強一館長(何と御年76歳!)のお話を聞いてなるほどと頷いた。「合気道」は、人としてありのまま、自然体である「半身の構え」がそもそもの基本で、ともかく重心を低くバランスをとり、その字の如く、相手と気を合わせることに真髄があるのだと。そして弟子から「どうやったら上手くなるのか?」という問いに対しては必ず「好きになること」と説くのだと。

ますます合気道が興味深い・・・。

押尾コータローという名前は知っていたが、彼の音楽を真剣に聴いたのは初めてかも・・・。押し入れにしまわれていた音盤を徐に取り出して一聴、感動した。そして繰り返しそのCDを何度も聴いた。特にラヴェルの「ボレロ」!!!
とても一人で演奏していると思えないほどのアレンジ(オーバーダビングなしということなので独奏というのは間違いないらしいが)。

押尾コータロー:ドラマティック

ライナーノーツ冒頭の押尾自身の言葉がこれまた素敵。
「人生いつもドラマティックでありたい。ところが現実は違うと思ってしまいますよね。でも『あの時ああなれば良かった・・・。』と思っていたことも今の僕には欠かせない出来事だっただろうし、年月が経てば、それも含めてドラマティックに思えます。僕の作るギター音楽にも、いつもドラマがある。時には強く・・・、時にはやさしく・・・そして聴く人によって様々に形を変えるドラマです。・・・」

そう、人生山あり谷あり。落ち込んで舞い上がって・・・。それでも、いつも自然体で地に足を着け、相手との間をきちんととるように心がけていればきっとうまくゆく・・・。


2 COMMENTS

アレグロ・コン・ブリオ~第4章 » Blog Archive » 無の境地

[…] ゴルトベルク変奏曲の普遍性、永遠性がまたもや証明されるかのような傑作編曲がここにもある。「ギター1本で!!」という驚きと、「もともとギターのために書かれた作品なのか」という錯覚と。確かエトヴェシュはショパンのピアノ作品についてもギター編曲してアルバム化していたと記憶するが(残念ながらこちらの音盤は未所有)、その超絶技巧たるやこれまた半端でない。しかし、クラシック・ギターのためのクラシック音楽という枠からははみ出していないので、そのあたりは非常に保守的といえば保守的。それと、ギターという楽器の構造上の問題もあるのだろう、第25変奏以降が少々弱い(僕的にはいよいよ勢いをまし、いよいよ神の境地に辿り着くようなイメージが欲しいのだが、エトヴェシュは決して人間界から離れない・・・笑)。 おそらく押尾コータローあたりが独自の編曲でバッハの鍵盤作品をギター音楽化するともっと面白いかもな、とふと考える。彼が録音した「ボレロ」などはもの凄かったな、などと回想しながら。 […]

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アレグロ・コン・ブリオ~第5章 » Blog Archive » 足るを知る

[…] ジョー・パスのギター1本によるこのアルバムは、録音から40年近くの時を経ても決して色褪せず、というより時間を経ることでますます異彩を放つ。どんな身体を持っているのかと思わせられるほど、とにかく指がよく回る。例えば、押尾コータローだって相当なテクニシャンで(押尾コータローと比較することがそもそも間違ってるか・・・笑。ならばジム・ホールのそれ)、初めてその演奏を聴いたときは卒倒するほど感激したものだが、それとはまた異質の、華麗だけれど重心のとっても低い、そしてあくまでもリラックス・ムードの中で全てを出し切っている、そんな印象の残る傑作である。 […]

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