チェリビダッケのブラームスを聴いて・・・

合気道を初めて10日ほどだが、身体のあちこちが痛い。筋肉痛というか関節痛というか、特に激しく無理な稽古をしているわけでもないのに、気がつくとそんな状態になっている。とにかく今は基本の構えを習得するべく先生や先輩方から手取り足取り教わっているのだが、これがなかなかうまくゆかない。どうしても力んでしまい姿勢を崩したり、頭で考えてちぐはぐなってしまったり・・・。
数年前から腰の重さを感じていたのだが、結局日常の姿勢に問題があることも合気道によってわかった。なるほど教わった構えを自然にとってみると確かに力を入れなくても地に足がつき安定する。逆に今まで通り「(自分的に)自然に」構えてみるとちょっとした力で簡単に倒されてしまう。グラウンディングというのはとても大事なことだが、自然体で地と一体化するようまずは正しい構えが身につくまで稽古をがんばろう。
合気道は「和」の武道だという。相手の力を利用して相手を倒すということだが、この相手の力を利用するということがなかなか体感できない。少なくとも自分が脱力状態にならない限りどうしても相手の力とぶつかってしまう。とはいえ正面から攻め込まれるとついつい力が入ってしまう。無になれ、と言われるけれど・・・(苦笑)。

セルジュ・チェリビダッケのあの哲学的で深遠な演奏は「禅」に譬えられる(彼自身が熱狂的な禅信奉者ということもあろう)。少なくとも残された録音で聴く限りにおいて意味深い演奏なんだろうということが理解できても、熱狂的な信奉者に僕がなれなかったのは何とも恣意的な演奏のように感じ、その造られた感がどうも先に鼻についてしまうからなのだが(特に最晩年のミュンヘン・フィルとの演奏は大抵がそう)、久しぶりに壮年期のシュトゥットガルト放送響とのブラームスのシンフォニー全集を聴いてみて、前述した合気道の体験とリンクし、音の缶詰を通じての体験にもかかわらず、チェリの凄さが少しわかった(本当に理解するためにはどうしても実演に触れないと無理。しかしそれはもう永遠に不可能)。まずは第1交響曲。まるでスタジオ録音のような緻密なアンサンブルとダイナミクスによる大演奏が繰り広げられるが、例えばフィナーレでの指揮者の強烈な唸り声などを聴くと、嗚呼これは間違いなく聴衆の入ったライブ録音なんだと気づけ、咳払いひとつないあまりの静けさから想像するに当日その場に居合わせた人にとってみると本当に宗教儀式のような様相を呈していたんだろうと想像できる。入念なリハーサルはおそらくされているだろうが、指揮者がまったく自然体で力まず(そのくせ唸り声ははいっているけど・・・笑)オーケストラ団員の持つ力を引っ張り出すことに見事に成功しており、本当に指揮棒の先から音が溢れ出るような演奏に(聴き慣れた作品なのに)感動してしまった。

ブラームス:交響曲第1番ハ短調作品68
セルジュ・チェリビダッケ指揮シュトゥットガルト放送交響楽団(1976.10.21Live)

第2交響曲もと思ったが、この鮮烈な演奏に脳天を直撃され、もう1度・・・。やっぱり素晴らしい演奏(しかし1回きり一期一会で体感する方が正しい聴き方だろう・・・音楽の聴き方に正しい・間違っているのはないのだけれど)。終始金管を抑え気味に弦主体での音楽作り(とにかく気配のない静けさを伴った抜群のトーン)は地味なようでいて、ティンパニのここぞという場面の一撃などとあわせると実にカリスマ的な意味深さを表出する。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。

ご紹介のチェリビダッケのブラ1、ホールのどの席で聴くか、どういうオーディオで聴くか、こちらの気分はどうか、などによっても、印象はまるで異なってくるんではないでしょうか?(どんな演奏でもそうですが・・・)

>無になれ

私にとっての最高のブラ1音盤は、やっぱり今はこれに尽きますね(笑)。
http://www.amazon.co.jp/Panasonic-%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%82%AF-%E9%8C%B2%E7%94%BB%E7%94%A82%E5%80%8D%E9%80%9F-10%E6%9E%9A%E3%83%91%E3%83%83%E3%82%AF-LM-BR50H10N/dp/B003TEFW3O/ref=sr_1_13?ie=UTF8&qid=1321049296&sr=8-13

毎回違う解釈が聴けます(笑)。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
ここのところの雅之さんのこれまで以上にウィットに富んだ洒落たコメントに感謝いたします。
確かにご紹介の盤に優るものはございません。
どんな音盤、演奏も受け取り側の状況によって変わりますよね。

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