ラジオのように

薄汚れた雲の合間から
一条の光が差し込む。
それは、希望の光か
はたまた気の利いた冗談か。

偶然にも、今日一日でいろんな友に会った。地下鉄で、とあるお店で。これも何かのメッセージか・・・。ともかく感じよう。

ここのところドビュッシーやラヴェルという19世紀末から20世紀初頭にかけてのフランスの作曲家の音楽を聴いて感じたこと。
それらが現代のポピュラー・シーンの様々な音楽の源泉、というかヒントになっているということ。中でもドビュッシーは最右翼。

多分20数年前だと思う。
渋谷のショップでふと手に取った音盤。
その時はまったくもって抵抗感をもったいわゆるアヴァンギャルド系の逸品。
もちろんドビュッシーのこともあまりよく理解していなかった。

フランス語の独特の語感が、何とも揺れ動くリズムが枠の中に嵌り切らない。
そうか、音楽とは言語と信仰心が組み合さって生まれたものなのか。
ソナタ形式というしっかりした枠組みがドイツで発展したのは、やっぱりドイツ語の語感やリズムから来るということなのか。フランス語のふわふわしたあの響きは、ドビュッシーの音楽そのものだ。そして、今ここに、久しぶりに聴いたアーティストのアルバムも全く同じ匂いを感じる。

Brigitte Fontaine, Areski avec Art Ensemble of Chicago:comme à la radio

1969年にリリースされたわずか34分ほどのこのアルバムを繰り返し聴いて思ったこと。
60年代末のあの当時の空気感がそのまま読み取れる、当時としてはおそらくとても前衛的で、賛否両論、いや、それどころか正面からはきちんと理解した人はどれくらいいたのだろうと思わせる代物(ヒット作だというけれど)。例えば、ラスト・ナンバー”Lettre a monsieur le chef de gare de la tour de carol”などはまんまThe Velvet Undergroundの1枚目や2枚目に収録されていても違和感のないようなもので、攻撃的なんだけれども柔和で、重心は低いんだけれど空気のようで、そんな「矛盾」を孕んだ傑作(だと僕は思う)。
それと、タイトル・ナンバー

ce sera tout-a-fait
comme à la radio
ce ne sera rien que de la musique
ce ne sera rien
rien que des mots des mots
des mots
comme à la radio

いやあ、すごい。
アート・アンサンブル・シカゴとアレスキー・ベルカセムの自在な演奏をバックにブリジットがそっと囁くように歌うこの曲は、21世紀の「今」を先取りする芸術。
おすすめ!

3 COMMENTS

雅之

おはようございます。

音楽とフランス語が不可分に結びついた傑作といえば、これですかね。

ドビュッシー 歌劇《ペレアスとメリザンド》全曲 
http://www.hmv.co.jp/product/detail/690338

ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」より、今は好きかもしれません。

他言語社会の中で聞くフランス語は、空気を一変させますね。

Michelle, ma belle
Sont des mots qui vont tres bien ensemble
Tres bien ensemble

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。

>ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」より、今は好きかもしれません。

確かに「ペレアス」というのは異様な魔力がありますね。
まだまだ「トリスタン」に比べ聴き込みが足りないので、もっと勉強しようと思います。
ありがとうございます。

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アレグロ・コン・ブリオ~第5章 » Blog Archive » ジョンの知的なピアノとミルトの優雅なバイブと

[…] 何だろう、この独特の哀愁を帯びた音色と煌めくような前向きな音楽の魅力は・・・。 才媛ブリジット・フォンテーヌはモダン・ジャズ・クァルテットのステージに触れ、大学で学ぶことに疑問を感じそのまま退学、やりたいことを好きなようにやってゆくという道を選択したという。後にも先にもMJQのようなバンドは存在しない。ジョン・ルイスの作曲能力とミルト・ジャクソンのヴィブラフォンの優雅な響きが掛け合わさって他にはない魅力を創出する。 彼らは、ジャンルを超え、本当にたくさんのアーティストに途轍もない影響を与えたのかも・・・。 例えば、ブライアン・ウィルソンなども影響を受けた一人なのだろうか?どうにも聴いたことがあるような「他人の空似」的音楽(旋律やコード進行や)が現れては消え、消えては現れ・・・。 久しぶりに彼らが1950年代全盛期に録音したアルバムのいくつかを繰り返し聴いてそんなことを感じた。 […]

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