出逢いって素晴らしい

brahms_munch_1.jpgいやぁ、盛り上がりました。第24回早わかりクラシック音楽講座。ちょうど10名の方にご参加いただき、ネクラのブラームス(笑)を採り上げました。本当にクラシック音楽愛好者の裾野を拡げるような活動になってきて、我ながら「良いこと」やってるなぁという気分に浸らせていただいております。

ただ、ブラームスの音楽は入門者にはとっつきにくいようで、作曲者渾身の第1交響曲もいまひとつピンと来なかった方が多かったのは「やっぱり」という感じだった。そういう僕自身も、高校生の時に初めてこの音楽に触れたときは、第1楽章の序奏のとっ係りから何がなんだかよくわからないという雰囲気で、本当にしばらく「お蔵入り」してしまったことを懐かしく思い出す。ブラームスという作曲家は、一般的には保守的で堅牢な音楽を書いたように思われているが、実は後のシェーンベルクなどに通じる「斬新さ」をもっていたようで、彼の音楽が100数十年を経た今でも、人口に膾炙し愛好する輩が多いことも今となってはすこぶる頷ける。今日の講座でも皆さんにお伝えしたが、ともかくめげずに聴き続けてくださいと思う気持ちでいっぱいである。まさに「スルメ」のような作曲家で、聴けば聴くほど味わいが出て来るのだから・・・。

ブラームス:交響曲第1番ハ短調作品68
シャルル・ミュンシュ指揮パリ管弦楽団

いわずと知れた天下の名盤。どんなに時代を経ようと、この音盤の価値は色褪せることがない。それは今日の講座でも採り上げてみて自ずと証明されたようで、少なくとも終楽章最後のコーダの部分でみんなの心をひとつにしてしまうほどのパッションを秘めていたことが明らかであった。この録音の直後にミュンシュは急逝してしまうのだが、世界は本当に惜しい逸材を失ったものだと、返す返すも残念でならない。まぁ、こういう音楽を後世に残してくれただけでよしとすべきなのだろうが。

講座の後の懇親会もいつものように盛り上がり、今日はその後、歌舞伎町の「ゴールデン街」に繰り出し、一日バーテンをやっているハラチョク君に会いに「10cc」に伺い、みんなで大いに語り合った。出逢いは誠に素晴らしい。


4 COMMENTS

雅之

おはようございます。
岡本さんの「早わかりクラシック音楽講座」の素晴らしい活動、心の底から敬意を評するとともに、応援しております。
ミュンシュ&パリ管のブラ1は天下の名盤ですが、私の好みは、岡本さんが前紹介されていたフルトヴェングラー&ベルリンフィルの1952年ライヴや、ベーム&ベルリンフィル(CDだと1959年ステレオ録音)です。ミュンシュ&パリ管盤はラテン的なオケの音色に少し違和感があります。
ミュンシュ&パリ管盤で興味深いのは、第4楽章のコラールの最高に盛り上がるところでのティンパニの扱いです。「ド、ソ」というスコア通りの2発の他に、ミュンシュはたくさん叩かせ、しかもティンパニのロールをクレッセンドさせていますね。同じようにスコア以外にティンパニを付け足している例として、トスカニーニ&NBC響やヨッフム&ロンドンフィルの録音などがありますが、皆やりかたは少しずつ異なります(私は両盤ともCDで所有)。
※ここから先、コメントにジョークを含んでいます(笑)。
この第4楽章のコラールのティンパニの解釈で、もう1枚、最近聴いて興味深かったCDに、千秋真一指揮R☆Sオーケストラ盤があります。
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%B9-%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC1%E7%95%AA~%E3%81%AE%E3%81%A0%E3%82%81%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%AC/dp/B000ALJ16S/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=music&qid=1236434156&sr=1-1
千秋氏は奥山真澄さんのティンパニに、おおまかにコントラバスと同じ音を叩かせて、ベースラインを強調させています。このバージョンの場合、本来は2台で済むはずのティンパニは6台(ペダルを踏んで音程を変えながら叩くとして、それでも4台)が必要となるため、大胆な改変です(佐久間学氏のCD解説より)。なお、千秋氏の演奏、ドラマやアニメではスコアどおりでした。
千秋氏の初めてのセッション録音であるこのブラ1は、少し固くなったのか、真面目過ぎて千秋氏にしては今一の出来でした(千秋氏はやはりライヴでこそ実力を発揮する、古いタイプの指揮者の一人だと信じています)。
千秋氏はドゥダメルと並ぶ才能の持ち主なのは衆目の一致するところなのですから、ぜひ次世代を担う巨匠に成長して欲しいものです。
なお、このCDのドボ8第1楽章(プラティニ国際指揮者コンクール課題、間違い探しスコア版)は面白いです。私はスコアを見ながら聴いても、一か所しか間違いを見つけることが出来ませんでした。

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雅之

補足
ミュンシュ&パリ管盤の第4楽章のコラールのティンパニの扱い、(手持ちのCDでは17′20″~17′25″あたり)、ミュンシュは「ド、ソ」の「ソ」の一音だけトレモロで伸ばしクレッシェンドさせています。トスカニーニやオーマンディ、ヨッフムの録音は、もっと大胆な改変です(千秋盤が最も大胆!)。スコアどおりの朝比奈やベームの録音などと聴き比べると面白いです。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
本音は僕もフルトヴェングラー盤なんですが、やっぱりステレオ録音となるとミュンシュ盤は捨てがたいんですよね。僕などはあのちょっとラテンっぽい明るさがブラームスの暗さと相まってバランスよく響くように感じるのです。ただし、ベーム盤は未聴ですので非常に興味深いです。
あと、例の第4楽章のティンパニの追加は有名ですよね。確かにスコア通りの朝比奈盤と比較して聴くと面白いですね。
しかし、千秋真一指揮R☆Sオーケストラ盤まで聴いておられるとは恐れ入ります。僕などはこのCDは見向きもしておりません・・・(笑)。CDには間違い探しまで入っているのですね。これは興味深いです。
補足でいただいたコメント、さすがにここまでは僕も知りませんでした(笑)。今後ともご教示よろしくお願いします。

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アレグロ・コン・ブリオ~第4章 » Blog Archive » 少し脱力してみようと気持ちを新たにする

[…] リスト:ピアノ協奏曲第1番変ホ長調 ブラームス:交響曲第1番ハ短調作品68 ニコール・アンリオ=シュヴァイツァー(ピアノ) シャルル・ミュンシュ指揮日本フィルハーモニー交響楽団(1962.12.20Live) ミュンシュのブラームス1番は例のパリ管とのものをLP時代から擦り切れるほど聴いた。阿修羅の如くの火を噴くような終楽章コーダの壮絶な演奏は、日本フィルとのものにおいても健在で(ことによるとスタジオ録音よりすごい迫力かも)、よくもまぁあの当時の日本のオーケストラからこんな音が出せたものだとついつい感心してしまった。収録された映像の処理方法などはいかにも50年前というものだが、まったく鑑賞に堪え得り、時を忘れて久しぶりにブラームスの世界に入り浸ってしまった感じ(それに何よりミュンシュの指揮姿に熱さと同時に脱力が感じられる点がすごい。もう何十回、何百回も振っているという自負と余裕が垣間見られる)。 当時、僕はまだこの世に生を受けていない。そのこと自体がとても不思議なことなのだけれど、世界にはシャルル・ミュンシュのような音楽家がいて、しかも遥々極東のこの地まで訪れ、できたばかりの上野の文化会館で、音楽ファンの心を癒すような仕事をしていたんだと知るだけで真に幸せな気分。 […]

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