さて、リサイタル当日。
満月で、しかも皆既月食が見られるということだったが、時間帯が未明ということもあり、僕はもちろん夢の中。しかも東京は朝から曇り空だから、果たして実際に見ることができたのかは不明。
リサイタル直前は、「耳が疲れるから」という理由で音楽は極力控えねばならないのだが、ピアニストが最終チェックをしている間、内緒で(笑)シベリウスの交響曲を聴いた。湿気を帯びた曇り空の今日のような日に無性に聴きたくなる音楽。最も晦渋といわれる決して取っ付きが良いとは言えない第4番だが、この作品の真価を僕に知らしめてくれたのがカラヤンその人。どんな指揮者の音盤に触れても今一つ心の琴線に触れなかったのが、見事に僕の感性にヒットした。何だろう・・・この感覚。当時のベルリン・フィルの各奏者の完璧なテクニックに依っていることは間違いないと思うが、肌触りが心地良く、どこをどう切り取って聴いてもまったく疲れない(それだけ丁寧に作られているということ。この音盤の制作に携わる全ての人々の愛が詰まっているような)。
録音はベルリンのイエス・キリスト教会で、現代では到底考えられないような時間とお金をかけて制作されているから悪かろう筈がない(1965年2月、5月、そして9月の3回に分けて!録られている模様)。
シベリウス:
・交響曲第4番イ短調作品63
・トゥオネラの白鳥作品22-3
・交響曲第5番変ホ長調作品82
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
死の諦念にとらわれた作品だといわれるが、僕にはむしろ「生きることへの希望」が託された前向きな音楽のように聴こえる。そのことを教えてくれたのがこのディスク。
ということで、そろそろ今晩のレクチャーの準備・・・。
こんばんは。
同感です。ご紹介の、カラヤンのシベリウス:第4~第7交響曲&タピオラ他は、他の音盤は全部捨てても最後まで残したい究極中の究極。とにかく最高。
第4交響曲では、第4楽章フィナーレに何度か出てくる「グロッケン」のパートを、グロッケンシュピールにするかチューブラベルにするかの問題があるのですが(カラヤンは普通にグロッケンシュピール)、吉松先生の珍説をご存じでしたか?
http://homepage3.nifty.com/t-yoshimatsu/~data/BOOKS/Thesis/sibelius02.html
愛知とし子さんのリサイタル、私が聴けるのは25日ですが、とにかく待ち遠しいです。
こちらは究極のベートーヴェン。本日最高の感動体験をされた聴衆の皆さんが羨ましい!!
>雅之様
こんばんは。
ようやく、いえに辿り着きました。
今回のリサイタルも「いろいろ」ありましたが、無事終了です。
25日は一層磨きをかけ、さらなる高みに達する予定です。よろしくお願いします。
ところで、第4番にまつわる吉松先生の考察、相変わらず素晴らしいですね。お見事です。
残念ながら詳細まで知らなかったので大変勉強になりました。毎々ありがとうございます。
[…] 真面目にカラヤンに対峙すると、時に驚くような奇蹟的名演奏に出逢える。 表面が完璧に磨き上げられた彫像物。あまりに完全で、あまりに美し過ぎところがいかにも偽物っぽい印象を与えるが、魂の抜け殻のようなものかといえば、さにあらず。内側から放出される劇的、壮絶なエネルギーと、その(音響的)広がりをひとたび耳にすれば、この人がどれほどの豊かな感性と類稀な音楽的スキルをもっていたかがよく理解できる。 名盤誉れ高いグラモフォンの選集をおそらく凌駕するEMIのシベリウス選集。暗澹たる交響曲第4番の、晦渋さを一気に超越し、これほど繊細かつ鮮烈な音楽に仕立て上げた人は他にはいまい。何という素敵な音楽なのだろう。 […]