ファニー・メンデルスゾーン ピアノ作品集

いやはや本当に参った。
猛暑が・・・、ではない。
放射能問題が・・・、でもない。
では、現在療養中の十二指腸潰瘍のことかというと・・・、そうでもない。
この24日(日)に、3ヶ月近くぶりに「早わかりクラシック音楽講座」を開催する予定で、テーマになっているメンデルスゾーン姉弟についてそろそろ再チェックをはじめようと、特にファニーの作品をいくつか音盤を仕入れて聴き出したところ、これがまた本当に驚くほど完成された作品の連続で、長い間クラシック音楽を聴き続けてきておきながら、不覚にもこれほどまでファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼルの発見が遅れてしまったことに対して猛省を余儀なくされた(大袈裟・・・笑)、そんな自分に愕然とした。それで突いて出たのが先の言葉である。

何十年も、僕の中でフェリックス・メンデルスゾーンは二流作曲家だった。一部の有名な作品については知悉していたものの、その生涯はもちろんのこと、数多くの室内楽作品についてもつい最近までほとんど知らないという状態だった。3年前の講座で初めてメンデルスゾーンを採り上げたとき、その天才にようやく気づき、フェリックスについてはよりたくさん聴き漁り勉強した。ファニーの存在の重要性をわかりながらも、彼女についての掘り下げはここ数ヶ月のこと。1年近く前に採り上げたピアノ・トリオも素晴らしい作品だと思ったし、先日の「歌曲集」についても感動した。でも、それ以上に感動したのはこのピアノ作品集。本当に素晴らしい!

ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼル:
・アレグロ・モルトハ短調
・小夜想曲ト短調
・ピアノ・ソナタハ短調
・リート変ホ長調
・ピアノ・ソナタト短調
・アダージョ変ホ長調
・アンダンテ・コン・モトホ長調
・ソナタあるいはカプリッチョ
・アレグロ・モルト・アジタートニ短調
・これで終わり
ヒーザー・シュミット(ピアノ)

フェリックス・メンデルスゾーンの作品には「アタッカ」で演奏される楽曲が多いといわれるが、ファニーのソナタト短調を聴いていて(この作品がいつ成立したのか勉強不足で知らないが、4つの楽章が連続で演奏される)、「無言歌」同様、アタッカ作品もファニーの発案なのではないかと思わせられる。実に挑戦的で革新的で、彼女がもしも男だったら、ひょっとするとベートーヴェン後の音楽界を牽引するリーダー的存在になったのではとついつい想像する。
変ホ長調アダージョの囁きかけるような可憐な主題、とろけるように愛らしい調べ、これなどはクララ・シューマンの「束の間の小品」に優るとも劣らぬ傑作だし、「ソナタあるいはカプリッチョ」の秘められた情熱の裏側を見せつけられるような暗く深い音楽はショパンのソナタ楽章を超える勢いだし・・・。絶句。
これはまたいつかぜひ愛知とし子に採り上げてもらわねば・・・。

※第46回「早わかりクラシック音楽講座」ではファニーの美しい音楽も存分に聴いていただく予定。たくさんの方のご参加お待ちしております。


3 COMMENTS

雅之

おはようございます。

ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼルの楽才には驚嘆するばかりですよね。
ただ、岡本さんに、比べ彼女が残した多くの曲への聴き込みが進んでいません。ナクソス盤のご紹介、ありがとうございます。早速入手し聴いてみます。

>アタッカ作品もファニーの発案なのではないかと思わせられる。実に挑戦的で革新的で、彼女がもしも男だったら、ひょっとするとベートーヴェン後の音楽界を牽引するリーダー的存在になったのではとついつい想像する。

アタッカは、姉弟どちらの趣味だったんでしょうね? しかし、一般に聴く弟メンデルスゾーン作品が、本当は姉弟どちらのオリジナルだったかについての線引きは、いよいよ難しくなりそうですね。

ところで、十二指腸潰瘍の件、そんなに大変だとは知りませんでした。どうかお体を労り、決してご無理をなさらず、お大事に。

ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第12番、第13番、第14番、第15番、第16番 東京クヮルテット(新録音SACD)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3902993

最近聴き、とても美しい名演で感銘を受け、大いに気に入りました。

第15番 作品132 から、
第3楽章 第3楽章 “Heiliger Dankgesang eines Genesenen an die Gottheit, in der lydischen Tonart” 「リディア旋法による、病より癒えたる者の神への聖なる感謝の歌」Molto Adagio – Andante
で、心よりお見舞い申し上げます。

よくご存じのように、ベートーヴェンが第1楽章完成後、高熱と激しい痛みを伴う腸炎にかかり、回復後に書いた至高の音楽ですので・・・。
http://www.youtube.com/watch?v=YrZBG2wfg5o&playnext=1&list=PL771A6050253A6264

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。

>一般に聴く弟メンデルスゾーン作品が、本当は姉弟どちらのオリジナルだったかについての線引きは、いよいよ難しくなりそうですね。

おっしゃるとおりですね。例えば、先日の愛知とし子リサイタルのとき、僕は「厳格な変奏曲」についての説明で、ようやくフェリックスが姉の呪縛から逃れて自立したであろう作品なのではないかと半分笑い話的に話しましたが、「ソナタあるいはカプリッチョ」の作風などから推測するとやっぱりこの作品もファニーの知恵が随分入っているんじゃないのかとも思えてきます。

>十二指腸潰瘍の件、そんなに大変だとは知りませんでした。
いえいえ、ご心配なく。自覚症状があまりないので本人的には気楽です。

「リディア旋法による、病より癒えたる者の神への聖なる感謝の歌」は最高ですね。後期の中では一番好きな楽章です。胃腸系の弱い僕の家系にぴったりです。ありがとうございます。

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アレグロ・コン・ブリオ~第3章 » Blog Archive » 女心と秋の空

[…] 最近でこそ女性作曲家が掘り起こされ、一部で注目を浴びているようだが、ここはやっぱりまだまだ男性上位の世界。クララ・シューマンやファニー・メンデルスゾーンの例を出すまでもなく、彼女たちは女性ならではの感性で切り開かれた名作をたくさん残しているのだけれど。まぁ、女性の心が読みにくいというのは確かだから、男たちが怯えてなるべく優秀な女性たちを表に出さないよう画策したのかもしれないし(笑)。 そんなことを考えながらバスに揺られていたら・・・、あっという間に家に着いた。 久しぶりにフランツ・シュミットでも。 […]

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