ジャズに腰を抜かしたストラヴィンスキー

ストラヴィンスキーの凄さは、自身の生まれ育ったロシア的感性を大事にしつつ、常に時代の新しい波を捉え、かつ自分の身の周りに存在するあらゆる音楽芸術を無心に学び、取り入れたことだろう。その創造物には、あの頃のパリの、場末のキャバレーの何とも大衆的な響きを醸す瞬間もあれば、古き良きアメリカの明朗で前進するジャジーな響きを感じる瞬間も多い。
例えば、彼はアメリカ移住後にはチャーリー・パーカーアート・テイタムの演奏を聴くために熱心にジャズ・クラブに足を運び(初めて聴いたとき腰を抜かすほど驚き感激したらしい)、研究したというのだから大したもの。もっとも本人的には勉強でも、研究でもなく、それこそ「好き」だから聴きまくったということなのだろうけれど。世間一般にはカメレオンなどと揶揄されるが、クラシック音楽界の位置作曲家に終わらず、ポピュラー音楽界においても自身の名を轟かせようと頑張ったところが素晴らしい(そんな名声やら立場はどうでも良かっただろうけど、でも、お金は欲しかっただろうな・・・笑。彼の創作エネルギーの原点はお金だと僕は思う)。

さて、ジョン・コルトレーン。

John Coltrane:Blue Train(1957.9.15録音)

Personnel
Lee Morgan(trumpet)
Curtis Fuller(trombone)
John Coltrane(tenor sax)
Kenny Drew(piano)
Paul Chambers(bass)
“Philly” Joe Jones(drums)

ひとこと。マイルスの傘下にいる時のコルトレーンとは明らかに違う勢いのある前のめりの演奏が揃う。2年前のアルバム”The New Miles Davis Quintet””’Round About Midnight”ではもっと大人しい、そんな印象なのだけれど。やっぱりリーダーという役割を与えられると人は誰でも頑張れるのだろうか(笑)。
Lee Morganがいかす。”Philly” Joeのドラム・ソロも抜群。それに何よりメンバー全員がこのアンサンブルを愉しんでいるのがよくわかって素敵。
5曲中4曲がコルトレーンのオリジナルだから、彼の作曲能力というのにも畏れ入る。
1曲目タイトル曲”Blue Train”から鮮烈な印象を与える。55年を経た今も、まるで3D映像でも見せられるか如くのリアルさよ(音的にではなく、コミュニケーション的に生々しいということ)。主題が帰ってきた後の最後の大団円はいかにもコルトレーンという音。鳥肌が立つ。
ストラヴィンスキーがジャズというものに腰を抜かしたのもよくわかる。

2 COMMENTS

雅之

おはようございます。

コルトレーンはテナーサックスを吹いていますが、どれもアルトサックスに聞こえますよね。だから、大地に根差しているように感じます(それがアフリカの大地なのかインドの大地なのかが後に彼の中で大問題になるのでしょうが)。

>マイルスの傘下にいる時のコルトレーンとは明らかに違う勢いのある前のめりの演奏が揃う。

マイルスもチャーリーパーカーの傘下では自分を出し切れなかったわけで、今のジャズ界は、そういう圧倒的な先輩ボスはいないんでしょうね、良くも悪くも。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。

>どれもアルトサックスに聞こえます
>だから、大地に根差しているように感じます

ああ、確かに!楽器の性能を越えてしまうんでしょうね、コルトレーンくらいになると。

>今のジャズ界は、そういう圧倒的な先輩ボスはいないんでしょうね、良くも悪くも。

ジャズに限らずだと思います。いや、音楽界にも限らずです。

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