音楽が、ホットなインプロヴィゼーションであることが心から伝わるパフォーマンス。乱舞は勢いよく、祈りの時はただただ心静かに・・・。
キース・ジャレットの、心を即座に感じとり、最も必要な音楽をその時その瞬間に創造する腕前は空前絶後。本人が音楽に没頭し、思わず唸り声をあげるのも頷けるというもの。
ここで奏されるのはスタンダード・ナンバーではある。しかし、まるでたった今その音楽が生まれたかのように命を吹き込むには余計な計算はない方が良いみたい。
“Stella by Starlight”(星影のステラ)。
冒頭、キースのソロ・ピアノは透明感がありながらウェットな響き。その上に被さるいつもの唸り声は、音楽が進むにつれ時に素っ頓狂な鼻歌紛いに変貌するが、いかにもライブの、興に乗ったキース・ジャレットの「生きた」音楽が僕たちを夢の世界に誘ってくれる。
3分半過ぎに、ゲイリーのベースとジャックのドラムスが入り込むや、自ずとテンポは上がり、音楽そのものが一層有機的になり、キースのソロさえも見事な色彩を放つようになる。これこそ音楽による三位一体の妙!各々が各々の動きをキャッチし、そして奏でられる音を聴き、開放と収束を繰り返し、進行する。極めつけは最後のキースのソロ。何という静寂、何という孤高。
“The Wrong Blues”(ザ・ロング・ブルース)。
何と色気のあるベース・プレイ。その上、キースの軽い指さばきによるピアノの音色が実に軽く、煌めくようで聴きもの。
“Falling in Love with Love”(恋に恋して)。
キースとジャックの緊張感溢れるインタープレイ。中間部のゲイリーのベース・ソロは細かい音の動きに終始し、愉悦的な音調に満ちる。それに応えるキースのピアノ、そしてジャックのドラムスがいかにも躍動する。
Keith Jarrett/Gary Peacock/Jack DeJohnette:Standards Live(1985.7.2Live)
Personnel
Keith Jarrett (piano)
Gary Peacock (bass)
Jack DeJohnette (drums)
“Too Young To Go Steady”(トゥー・ヤング・トゥー・ゴー・ステディ)。
何という哀しいピアノの響き。巷では、「7分28秒に現れるメロディは何度聴いても奇蹟的な美の瞬間だ」といわれるが、確かにここは、ブラームスのピアノ協奏曲第2番終楽章の主題に似た旋律で得も言われぬ喜びと恍惚感がある。
“The Way You Look Tonight”(今宵の君は)。
後半の3人の勢いはますます加速する。何という即興的交錯!!聴衆は思わず歓声を上げ、拍手する。
“The Old Country”(オールド・カントリー)。
踊り狂い、ピアノと格闘するキースの姿が眼前に見える音の魔法。キース・トリオの真骨頂が垣間見られる。
ジャズというものが、いかに「いまここ」の音楽であるかを教えてくれる傑作。
完璧、である。
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