ぼんやりとパレーのラヴェル&ドビュッシー

意外にじっとしていられない性質で、昔から休日も働く癖がついていた。
何にもないと心身が鈍ってしまう気がしていた。
今は、毎日が日曜日のようなものだが(笑)、裏返すと毎日が闘いのような日々だともいえる。ということで、本当の意味で「休むこと」はとても大切なことだと思うから、ここのところ1週間に1日は「何もない日」を設定するようにしている。
今日がその日。
「休み」だと自分に言い聞かせても、ついついあれやこれやと考えてしまうものだが、まずはそれを止めようと朝から決意する。そこで、音楽を聴いたり本を読んだり、ぼーっとしたり。といっても僕の場合、「音楽を聴く(観る)」という行為もある種仕事のようなものだからなかなかきちんと思考を停止することができない。

マリインスキー劇場でのゲルギエフ指揮によるチャイコフスキーの「白鳥の湖」のBlu-ray映像を観た。いやはや、マリウス・プティパらによって作曲者の死後再演されて以降途轍もない成功を収めたこのバレエの魅力は計り知れない。冒頭の導入曲から完全に引き込まれてしまうが、実は今週末の墨田区の講座で「くるみ割り人形」がテーマになっているので、結局その時の講義内容をあれやこれやと思案しながら吟味している自分に気づく。そうこうする内2時間超の時間はあっという間に過ぎる。チャイコフスキーの、いや、ロシア芸術家のバレエ発展に対しての功績について考えるうちちょうど100年前のヨーロッパを席巻したバレエ・リュスのことに思い至る。

1900年代の絢爛と退廃の錯綜するヨーロッパの芸術界を仕切ったのは、ほかでもなくセルゲイ・ディアギレフ率いるバレエ・リュス。ストラヴィンスキーもラヴェルも、そしてドビュッシーもニジンスキーやイダ・ルビンシテインらのために争うかのように最高の舞踊音楽を拵えた。

それらの作品は、バレエ抜きで、すなわち音楽だけを取り出して聴いてみても、真に色彩感豊かで、しかも代表する上記3者のあまりにも性格・性質の違う音楽の方法がそれぞれに心を震わし、脳内を掻き回す。このあたりはやっぱりバレエを繰り返し観て研究したいと常々考えるところだが、その想いは未だ達成されていない。かれこれ20年近く前にモダン・バレエに凝っていた頃には生の舞台に何度も接したが、最近はとんとご無沙汰。少なくとも映像をもう少し仕入れて徹底的に反復視聴するところからまた初めてみようと思う。嗚呼、またもやバレエ熱に火がつきそうだ。

ところで、久しぶりにポール・パレーの演奏するラヴェルとドビュッシーを聴いた。アメリカの楽団であることが功を奏してかいかにも晴朗なフランス音楽を演出する。雲がかからない、真っ青で空気の乾燥したまるで西海岸チックな(笑)5月のラヴェルとドビュッシー。

ラヴェル:
・バレエ音楽「ダフニスとクロエ」組曲第2番(1961.3録音)
・高貴で感傷的な円舞曲(1959.4録音)
・ボレロ(1958.3録音)
ドビュッシー:
・管弦楽のための3つの夜想曲(1961.3録音)
・小組曲(1959.4録音)
マルコム・ジョンズ指揮ウェイン州立大学女子グリークラブ
ポール・パレー指揮デトロイト交響楽団

しかし、ラヴェルはガーシュウィンと交流を持ち、明らかにジャズの影響を受けた(ドビュッシーは東洋趣味に傾く時期があった)。よって、アメリカのオーケストラによるアメリカ的ラヴェルは極めて興味深い(その意味で、東南アジアの楽団によるドビュッシーなんかも聴いてみたいところだ)。

ちなみに、この録音が行われていた頃(“Kind Of Blue”や”Porgy and Bess”、”Sketch Of Spain”、”Someday My Prince Will Come”が録音された頃!)はマイルス・デイヴィスの(ある意味)絶頂期と重なる。


4 COMMENTS

雅之

おはようございます。

パレーのフランスもの、素晴らしいですよね!
録音がまた、ものすごくいいですよね。

>(その意味で、東南アジアの楽団によるドビュッシーなんかも聴いてみたいところだ)。

面白いSACDを持っています。

・ドビュッシー:交響詩『海』
・周龍(ジュー・ロン):深い、深い海
・フランク・ブリッジ:組曲『海』
・グラズノフ:幻想曲『海』
 シャロン・ベザリー (アルト・フルート、ピッコロ)
 シンガポール交響楽団
 ラン・シュイ(指揮)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2551786

ラン・シュイ&シンガポール響は、マーラー:交響曲第10番(カーペンター版 私の所有しているのはDVDではなくBD)、
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3928856
や、マーラー「大地の歌」(中国語版 SACD)でも高く評価おります。大変に上手いし、自分たちのカラーをしっかり持っているのがいいです。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
興味深いCDのご紹介ありがとうございます。収録曲も魅力的ですね。
マーラーとあわせて聴いてみたいと思います。

返信する
岡本 浩和

>ふみ君

>シューマンの交響曲とかも名演です。

あー、パレーのシューマンは未聴ですわ。聴いてみる。ありがとう。

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