「祈り」~「未完成」と「パルジファル」前奏曲

schubert_8_asahina.jpg表参道で所用があったついでに行きつけの美容室に寄り、いつものシャンプーを購入した。オーナーのKさんが珍しく時間があったようでコーヒーを勧めてくれたので、20分ほど世間話をした。Kさんも会社を経営するうえで「謙虚さ」が大事だという。そうでないと人がついてこないし、お客様から嫌がられるのだと。直接そういう言葉では言わなかったものの、そういうニュアンスを感じた。
新宿に戻り、次のアポイントまで時間があったので、Mさんが面白いと言っていた映画を観た。ニコラス・ケイジ主演の「NEXT」(フィリップ・K・ディック原作のSF小説「ゴールデンマン」がもとになっている)。深い意味はないが、純粋に映画として確かに面白い。自分に纏わることならば2分先まで未来が見えるというマジシャンのクリス・ジョンソン。
今見える未来は、今の未来であって、その未来は変えることができるのだと。うーん、意味深い・・・。

昨日、雅之さんからロストロポーヴィチの無伴奏チェロ組曲をとりあげた日のブログにコメントをいただき(いつもありがとうございます)、それに対しても返事は書いたのだが、その内容に触発され、久しぶりに朝比奈御大のCDを取り出して聴いてみた。

シューベルト:交響曲第8番ロ短調D.759「未完成」
朝比奈隆指揮東京都交響楽団(1995.1.22東京芸術劇場Live)

録音の日付を見ていただいてもわかるように、このLiveは阪神大震災の5日後の演奏会の収録である。神戸の自宅で被災した御大が、とにかく楽しみにしてくれているファンのことを想い、キャンセルすることなく元気に舞台に登場し、被害に遭われた多くの方々への追悼の気持ちを託し、指揮棒をとったこの日の演奏会は静寂に包まれ、とても感動的だったことを思い出す。第1楽章、第2楽章ともに極めて遅いテンポで進むこの「未完成」交響曲は「祈り」に満ち、今聴いてもとても新鮮で、心が震える。
2000年最後の来日時のギュンター・ヴァントの演奏も凄かったが、別の意味で感動的であった。

この音盤には93年に東京文化会館で収録されたワーグナーの舞台神聖祝典劇「パルジファル」から「第1幕前奏曲と聖金曜日の音楽」がカップリングされている。上記「未完成」交響曲同様、静謐な中に「魂の慟哭」を感じさせる圧倒的な名演奏である(と僕は思う)。

四川大地震で「いてもたってもいられない」という一心から中国国内ではボランティアなど被災地支援の輪が市民の間で広がっているようだ。政治の駆け引きとは裏腹に、人が人としての心を失っていない姿に感動させられる。

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