ブラームスのクラリネット・トリオ

今度の「早わかりクラシック音楽入門講座」では、ブラームスのクラリネット五重奏曲を採り上げる。この何とも哀感に満ち、郷愁に富んだ音楽を僕はことのほか愛し、若い頃初めて聴いたときには日がな繰り返し聴いたものだ。実演ではカール・ライスターをメインにしたコンサートがとても良かった(確かこの時はモーツァルトとカップリングされたプログラムだったように記憶する)。
本当なら秋深まりゆく季節に、独り自由な気持ちで聴くのがベストなのだが、いよいよ梅雨に入ろうとする水無月の時節にも不思議と似合う。鬱陶しい気候を吹き飛ばすのに、ある意味ジメジメしたブラームスらしい音楽がぴったりはまるように僕には思えるのだ。

講座では、最近は必ず映像を中心に進めてゆくことをルールとしている。
入門者には音だけより演奏者の姿を映しながらの方がより理解していただけるし、一層音楽に共感していただけるようにも思うから(そういえば僕も初心者の頃はとにかく映像を観て聴きたいと常に願っていた。でもあの頃は今のように簡単に安価で映像が手に入る時代じゃなかったからなかなかその想いは達せられなかったけれど)。
しかしながら、クラリネット五重奏曲の映像がどうにも見当たらない。Youtubeやニコニコ動画にはもちろん落ちているが、一般市販されているソフトはどうやらない模様。さて、どうするか。ということで、急場しのぎでYoutubeなどからダウンロードすることを考えているが、画質があまり良くないというのが難点。
それにしても不思議だ。どうしてこの名曲にDVDないしはBDのソフトがないのか・・・。

ブラームス:
・クラリネット三重奏曲イ短調作品114
・クラリネット・ソナタ第1番ヘ短調作品120-1
・クラリネット・ソナタ第2番変ホ長調作品120-2
レオポルト・ウラッハ(クラリネット)
フランツ・クヴァルダ(チェロ)
フランツ・ホレチェク(ピアノ)
イェルク・デームス(ピアノ)(1950録音)

諦念の境地にあった最晩年のブラームスのクラリネットを伴った諸楽曲はどれも素晴らしい。特に、クラリネットの響きが何だか尺八のそれを想像させ、邦楽の世界で時に宇宙とつながり人と人とをつなぐかのようなあの独特の「自然音」を想像させ、無性に寂謬感を煽る。
ウラッハの奏でるクラリネットの音を聴いて感じたこと。
ブラームス最後の日々は決して暗いものではなかった。彼は大いに生きようとした。ここには希望と喜びに溢れた、およそブラームスらしからぬ(笑)澄み切った一体感が刷り込まれている!
そうか・・・、ブラームスはクラリネットに恋しているのだ・・・。
だからこそ身も焦がれるほどの想いが、枯れたような音色の内から浮かび上がるのか・・・。
久しぶりに聴いたクラリネット・トリオは妙に明るかった(と感じた)。
そして、ソナタはすごく透明だった。

今宵、音楽愛好家の定例会。盛り上がった。

3 COMMENTS

雅之

おはようございます。

>しかしながら、クラリネット五重奏曲の映像がどうにも見当たらない。

そういう場合は、予め日頃から、岡本さんの幅広い人脈を活用し音大学生や上手いアマチュア演奏家とのコネクションを作っておき、彼ら(彼女ら)に実演を披露してもらうというのも、今後ひとつの有効な手段に成り得るかもしれませんよ。彼ら(彼女ら)とよい関係を築いておけば、ノーギャラで心がこもり気迫に溢れた演奏を快く披露してもらうことだって充分可能だと思います。

学生のころ、私は下手な楽器をやる友人同士でクラシック音楽同好会を結成し、コンサート会場で自らビラを配り、広く一般に会員を集め、名曲喫茶を貸し切り定期的にレコードコンサートなどを開催したりしたことがありしたが、音大の友人たちに依頼し、ノーギャラでラヴェルの弦楽四重奏曲などを演奏してもらったことがあります。予想以上に圧倒的な名演で大成功でした。

どんな歴史的名盤よりも目の前で繰り広げられる実演のほうが、絶対、聴き手に強烈なインパクトを与えるはずです。

ところで今週は、モーツァルトやブラームスなどの室内楽曲を、実演での名演で聴くことができました。

ブラームス :ヴィオラ ソナタ ト長調(原曲:ヴァイオリン ソナタ 第1番 ト長調「雨の歌」)他 今井信子(ヴィオラ)、フランソワ・キリアン(ピアノ)他
http://www.shirakawa-hall.com/detail_20120607.html

ハイドン:弦楽四重奏曲 変ロ長調 作品71-1 Hob.III-69
ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲 第12 番 へ長調 作品96「アメリカ」
モーツァルト:クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581
プラジャーク弦楽四重奏団:
パヴェル・フーラ(ヴァイオリン)、ヴラスティミル・ホレク(ヴァイオリン)
ヨセフ・クルソニュ(ヴィオラ)、ミハル・カニュカ(チェロ)
共演:榊原祐子(ピアノ)
http://www.munetsuguhall.com/concert/201206/20120604M.html

其々最高で、大変満喫できました。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
なるほど~!!
それは名案です。
ギャラ交渉がしっかりできれば、面白い企画になりますね。ありがとうございます。

>どんな歴史的名盤よりも目の前で繰り広げられる実演のほうが、絶対、聴き手に強烈なインパクトを与えるはずです。

確かにおっしゃる通りですね。
どんな録音も実演には敵いません。

>モーツァルトやブラームスなどの室内楽曲を、実演での名演で聴くことができました。

これは、例によって仕事の一環ですか?いやぁ、素晴らしい。いずれも聴いてみたかったコンサートです。
特に「ヴィオラ・スペース」は興味深いです。

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