モーツァルトの魂の声

気がついたら2012年も1ヶ月が過ぎていて、そういえば今年はマエストロ、ブルーノ・ワルター没後50年だということを「レコード芸術」の記事で知り、僕が初めて巨匠のレコードに触れたのが1980年頃だから、その時はまだ亡くなって20年にも満たなかったんだと再確認した。せっかくだから今月はことあるごとにワルターの名盤を聴いていきたいと思うが(何ぶん気紛れだから予定はあっさり破られるかもだけれど)、SPからステレオ録音まで、カラヤンとは別の意味でワルターほど音盤歴の長い指揮者はおらず、同曲異演も多いので、どのあたりから攻めようか悩むところである。
まぁ、しかし、ここは順当に十八番のモーツァルトからいってみようと、1950年代の全盛期に録音した交響曲集から1枚を取り出してみた。

モーツァルト:
・交響曲第36番ハ長調K.425「リンツ」(1955.4.26-28録音)
・交響曲第38番ニ長調K.504「プラハ」(1954.12.6録音)
ブルーノ・ワルター指揮コロンビア交響楽団、ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団

僕は「リンツ」交響曲がとても好きで、古くはステレオの方のワルター&コロンビア響の録音をメインに繰り返し耳にし、20年ほど前にカルロス・クライバーがウィーン・フィルハーモニーと収録したムジークフェラインでのライブで衝撃を受けて以来専らこの映像を主体として楽しんできた。でも、音だけで聴くなら以前ワルターの解釈が僕の中で最右翼で、しかも上記の50年代のモノラル盤が、僕が聴き始めの頃は確かリハーサル風景がまるまるレコード1枚に収められた聴きごたえ十分なものだったことを思い出した。ブルーノ・ワルターの楽員への愛に満ちたリハーサルは本当に素晴らしく、以前ワーグナーの「ジークフリート牧歌」の練習風景の素晴らしさについて言及したことがあるが、それに負けず劣らず「すごい」ものだった。残念ながら、例によってLPレコードを処分してしまっているものだから僕の手元にそのアナログ・レコードはない。何とも悔しいけれど。

ところで、上記「リンツ」。ワルターらしいゆったりとしたテンポで優雅に進められてゆく演奏は余裕があって、真に貫録十分。どの瞬間も軸が安定し、芯が骨太で、「モーツァルトの魂の声」が響く。ずっと身をその中に委ねていたいと思えるくらい。
ちなみに、カップリングの「プラハ」交響曲は96年の発売時、初リリースの音源だったよう。そういえば宇野功芳氏の「名指揮者ワルターの名盤駄盤」にもこの録音にまつわる記述はないから録音後40数年を経てようやく陽の目を見たということになる。
肝腎の演奏は、どうしてこれが当時表に出なかったのか理解できないくらい素晴らしいもの。音楽は生気に満ち、厚みも十分で、常に前進する。

※合気道の稽古も早いもので始めてから丸3ヶ月が経過した。ようやく少しずつ身体が慣れてきた。基本動作もだんだんわかってきた。先生はともかくできるだけ昇級審査を受け、演武に出ることだとおっしゃられる。確かに経験を増やし、モティベーションを高めることが大事だろう。ちなみに、今度の土曜日から早朝の稽古の開始時間が午前6時半からになる。朝の30分は大きい。しかし、この際前向きにがんばる。


2 COMMENTS

雅之

こんばんは。

レコ芸の読者は、我々の学生時代と比較して、恐ろしく高齢化してるんでしょうね。
読者の投書欄なんて、我々が若いころは、10代、20代の同世代か少しだけ先輩の理屈っぽい音楽論が目立ったけど、今じゃ年寄りばっか(笑)。

1年以上ぶりにレコ芸買ってみたら、評論家の記事には全然ときめかないし、読者の投書欄に載っていた方々は、「51歳フリーター」「52歳アルバイト」「64歳無職」「70歳不動産賃貸業」「74歳医師」って、
若いもんはおらんのかい!!!

コンサートも、昔より年寄りの客が圧倒的に多いしなあ。

この趣味の世界も、ふみさんたちの若い世代が渇望されているよ!!
仕事は忙しいと想像するけど、趣味にも昔以上に注力していただくことを願っています。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
本当に「レコ芸」はある意味地に堕ちましたね。
まぁインターネットがない昔は情報を仕入れる優位つの手段でしたから、毎月20日が本当に楽しみでしたし、広告も含めて隅々まで読み尽くしたことを思い出します。
執筆陣も、特集記事もかつての方が味わい深く興味深かったように思うのですが、気のせいでしょうか?
(今の時代、レコ芸を読むのはネットが苦手なシルバー世代が多数を占めているのでしょうね)

>この趣味の世界も、ふみさんたちの若い世代が渇望されているよ!!
仕事は忙しいと想像するけど、趣味にも昔以上に注力していただくことを願っています。

おっしゃる通りでございます。仕事は大事だけど趣味はもっと大事だと思います。

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