満月に憑かれた・・・

schoenberg_pierrot.jpgなるほど台風の影響というのは大きいものだとあらためて実感した。今朝から強風と強烈な雨で外がやけにガタガタとうるさい。上陸しているわけでもないのに、である。またしても電車が止まったりして相変わらず東京は自然の力の前に「脆さ」を露呈するのだが、昼ごろにはすっかり雨もあがり、雲間から陽光が差し、淀みない平穏な「気」が訪れる。
少しばかり仕事をこなしながら音楽を聴こうと棚を漁る。
Roxy Musicの音楽、Bryan FerryのVelvet Voiceは過ぎ去った嵐の後の静寂の空間にとてもよく似合う。1980年発表の「Fresh + Blood」を小さめの音量で流す・・・。Bryan Ferry、Phil Manzanera、Andy Mackayの3人編成となったRoxyの紡ぎ出す都会的なセンス満点の楽曲群は、以前取り上げた「Avalon」とともに30年近くを経た今でも色褪せない(初期のRoxyの音楽は多少古びた感をもつのだが)。

「Running Wild(Ferry, Manzanera)」
There’s that melody again
burning through my head it does me in
turns me right around to my old friend
wonder how you’ve changed, are you still

またしてもあのメロディが
僕の頭の中を焦がしながら抜けてゆき
僕に古くからの友を思い出させる
どう君は変わったんだい、あるいは今でも

満月。天気が良くなってよかった。
Hから2日前にお誘いがあり、曙橋の「橘屋」で開催された「おとなの寺子屋トークショー」に参加する。何の催しなのかはっきり確認しないまま参加したのだが、メインの講演もその後の懇親会もとても楽しめた。料亭の御主人でもある主宰の上田比呂志氏はもともとフロリダのディズニー・ワールドに勤められており、世界中で活躍されていたという逸材で、ディズニーの3つの柱-すなわち、お客様への「想い」、想いを実現するための「スキル」、そしてお客様に感動を与えるための「仕掛け」-について経験から得た貴重なお話をうかがえてとても良かった。

帰宅後、シェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」を聴く。この音楽は何度聴いても不気味(笑)である。

シェーンベルク:月に憑かれたピエロ作品21
クリスティーネ・シェーファー(ソプラノ)
ピエール・ブーレーズ指揮メンバー・オブ・アンサンブル・アンテルコンタンポラン

第18曲「月のしみ」

明月という一点の白いしみを、
黒い上衣の背に受けながら
ピエロはなま暖かい夜をさまよう
楽しみとアヴァンチュールを求めて!

急に衣服が気にかかり
ぐるりと見まわし たしかに見つけた—
明月という一点の白いしみを
黒い上衣の背に受けながら

待てよ!と彼は考える これは漆喰のしみかも!
はたいても はたいても—-落ちやしない!
そうするうちにますます腹を立て
夜が白むまでこすりつづける—-
明月という一点の白いしみを
(柴田南雄訳)

クリスティーネ・シェーファーの妖しくも美しいソプラノの詠唱が心を打つ。ソプラノと言えど、この音楽はシュプレッヒシュティンメ-語りと歌との中間的な歌い方-という特殊唱法(シェーンベルクの特許のようなものか)が特徴。語弊がある言い方だが、ボブ・ディランの歌い方に近いものがあると僕は思う。
それにしてもピエール・ブーレーズはいわゆる現代音楽を振らせると完璧である。

何だか「ピエロ」を聴くと、妙に心が洗われ、何でも無心に捨てれるような気になる。

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