絵と音の対話、第1日「絵と音―対話的手法」

国立近代美術館60周年記念「絵と音の対話ConcertoMuseo」を訪れた。本日が第1日目で「絵と音~対話的手法」というテーマで松平敬氏による一人パフォーマンス。興味深い試みだった。第2日目の明日は何と「アルマ・マーラーの傍らで」というテーマでシューマンの「女の愛と生涯」やアルマの歌曲集などが披露される。そして明後日第3日目は「抽象芸術の相即」ということでバッハやライヒ、あるいは黛らのチェロ作品が採り上げられる。本当はすべてをこの目で確かめたいのだが、残り両日とも仕事のため断念せざるを得ない。無念残念。

ConcertoMuseo~絵と音の対話 2012.8.10(fri)-8.12(sun)
2012年8月10日(金) 19:00開演
「絵と音―対話的手法」
プログラム
・グレゴリオ聖歌:「主の祈り」、「めでたし、天の星」
・ジョン・ケージ:一人のための音楽
・ジョン・ケージ:8 Whiskus
・早坂文雄:「うぐいす」、「孤独」~「春夫の詩に拠る4つの無伴奏の歌」より
・湯浅譲二:R.D.レインからの二篇
・草野心平:ごびらっふの独白
・クルト・シュヴィッタース:Obervogelsang、The real disuda of the nightmare
・木下正道:石をつむⅡ
・ジョン・ケージ:アリア
松平敬(バリトン)

展示作品
・ワシリー・カンディンスキー:「全体」(1940)
・クルト・シュヴィッタース:「E.+E.シュヴィッタースより」(1947)
・ハンス・リヒター:「色のオーケストレーション」(1923)
・古賀春江:「海」(1929)
・北脇昇:「周易解理図(八卦)」(1941)
・若江漢字:「見る事と視える事―枝」(1978)

今回のコンサートは松平氏が単独で歌を披露するというもの。つまり単旋律での歌曲ということになる。そしてその趣旨に合すかのように選ばれた絵画は、例えば「周易解理図(八卦)」のように線で表現されたもの。
最初に歌われたのは1000年以上も前に既に歌われていたグレゴリオ聖歌。その後、一気に時代は20世紀に入り、ケージのアバンギャルドな世界が現出する。歌詞はない。擬声音の連続、そして異常に長い休止の連続(長い部分で30秒ほど)。ケージの信念として、休止中の世間に溢れかえる雑音までもが音楽として機能するのだということらしい。面白い。早坂文雄の音楽は浪曲のようないかにも日本的音楽。松平さんの解説によると早坂氏はグレゴリオ聖歌も随分研究されたのだと。ということはそれらとの関連性が自ずと感じられるのか。湯浅譲二の音楽は図形的。そして、草野心平の歌、と言うより詩。全編蛙語で披露された(笑)。ユーモアに富む。シュヴィッタースの音楽は彼の絵の前で披露された。

最後の2曲は木下正道の1曲とケージの1曲。いずれも10分弱の作品だが、強烈だった。木下さんの作品「石をつむⅡ」はほぼ全編「石をつむ」という言葉の反復(拍子や表現を一つ一つ変えて同じ言葉でも同じものは一つもないことをアピールする。若江漢字の絵の前で歌われたが、この「枝」という作品、同じような枝でもひとつひとつが違うんだということを表現しているもの)。会場にいらした作曲家ご本人の説明もあったが宮澤賢治の2つの詩により松平敬さんの委嘱で作曲したものらしい。驚きの音楽である。
最後のケージの「アリア」はジョン・ケージでなきゃ生み出せない代物。10種類の唱法によって歌われた。
予定時間を超え1時間15分ほどのステージ。良かった。僕の耳も随分前衛に慣れてきたものだ・・・(笑)。


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