ドヴォルザークの「ズロニツェの鐘」

ドヴォルザークの第1交響曲というのは、これまで特に意識して聴いてこなかった。
年末年始の休み期間中に普段あまり聴かない音楽をいろいろ聴いてみようと、ネーメ・ヤルヴィがスコティッシュ・ナショナル管と録音した音源を繰り返し耳にした。
作曲家がしばらく忘れ去っていたというほどのいわゆる若書き、習作だけれど、24歳の時から既にドヴォルザークはドヴォルザークで、極めてフレッシュな楽想が横溢し、しかも全曲で50分強を要する立派な構成がこの天才の後年の姿を明確に反映しており、聴き応え十分、とても説得力のある音楽にあらためて度肝を抜かれた。

昔からよく言われるように、ドヴォルザークのメロディストぶりが発揮された佳作。
それと若々しさと勢いと。後期の交響曲のような熟れた雰囲気にはまだまだ乏しいが、おそらく当時の彼が自信を持って世に送り出そうとしたものなんだろうと勝手に思いを馳せる。自身が生まれ育った村に因んで「ズロニツェの鐘」の名称を持つが、故郷への郷愁や懐かしさもさることながら、燦然と輝く太陽の如くの暖かさを持ち、若き作曲家の自然への感謝の念のような思いが汲み取れる(ように僕には感じられる)。
年末休暇に帰省し、故郷の空気を吸いながら僕自身が郷愁に耽っているということなのかも・・・(笑)。

ドヴォルザーク:
・交響曲第1番ハ短調作品3「ズロニツェの鐘」
・交響詩「英雄の歌」作品111
ネーメ・ヤルヴィ指揮スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

ドヴォルザークにベートーヴェンの呪縛はなさそうだ。
苦悩も闘争もここにはない。
ネーメ・ヤルヴィの棒も完璧。夢と希望に満ち満ちた音楽を見事に再現する。
とはいえ、どうして作曲家は長い間お蔵入りにさせてしまったのだろう。しいていうなら、1865年当時としては少しばかり長大、冗長にすぎるのか。
そんなことを差し引いても稀に見る第1番の傑作であると僕は考える。20年かけて創作したブラームスのそれより素晴らしいのではと思うのだ(わずか1ヶ月半ほどで創作したとは思えない)。


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