職人技、ヴァントのベートーヴェン!

ギュンター・ヴァントの最晩年の一連の録音というのは実に若々しい。
それでいて緻密な音楽づくりが隅々まで行き届いており、老練の響きをあわせもつ。

もうすでに何度も書いたことだから細かくは書かないけれど、東京オペラシティでの最後の来日公演は空前絶後の超名演奏だった。思い出すだけでいまだに身体の内側から熱くなる、そんなシューベルトでありブルックナーだった。
この後1年少しで彼は世を去るが、力みの全くない、音楽しか感じさせない最高のステージが繰り広げられた。あの時、あの場にいた聴衆の緊張感も半端でなかった。息をのんで登場を待つまでの静寂と袖からヴァントが現れた時の安心の溜息とどよめきと・・・。

あの日のことが蘇る。
このベートーヴェンの若き日の名作を、これまたヴァントが余裕の棒で料理する。
それに一途についてゆくオーケストラの類稀な力量。そこには弛まぬ稽古の継続の証が垣間見える。

ベートーヴェン:
・交響曲第1番ハ長調作品21(1997.12.7-9Live)
・交響曲第2番ニ長調作品36(1999.2.21-23Live)
ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送交響楽団

実に透明なベートーヴェン!!あえてピリオド的解釈に依らずともこれほどまでに見通しの良い演奏が可能なことに度肝を抜かれる(ベートーヴェンはこうでなくてはと再確信)。
ここには音楽しか感じられない。1800年、そして1802年、すなわち30代初めの若きベートーヴェンの挑戦が「まったくぶれない軸」を伴って形にされる様。
いずれの楽章も「こうであらねばならぬ(”Es muss sein!”)」というテンポとバランスと。
心地良い。そして、何度も聴きたくなる。

反復と継続。成功の原則はここにあると僕は思う。そこに早い遅いは関係ない。
自分の信じた道を、あるいは方法を周囲に何と言われようとやり通すこと、これしかない。
ギュンター・ヴァントのベートーヴェンはそのことを教えてくれる。


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