ロシア音楽の魅力

glazouniv_mutter_rostoro.JPGロシア音楽が暗いということはもはやわかりきった事実だが(本当か?!)、昨日の晴香葉子さんのご講演の最後で、ロシア文学の魅力とは結局何なのかを次のようにまとめられていたのを聴き、とても納得した。

ロシア文学の魅力とは、すなわち、闇があるからこその光の美しさであり、苦悩があるからこその愛の実感だと思う。そしてたゆまぬ努力の上での共有する時間、一緒に楽しく過ごす時間が短いからこそしっかりつながっている時間を実感できるのだと思う、そんな話だった。

表があっての裏、壁があっての幸せ。どんなことも受け容れ、前向きに生きてゆくことの重要性をあらためて教えていただいたようで良かった。

よくよく考えてみると、当たり前のことである。右肩上がりに順風満帆であったとしても、いつまでもその状況が続くわけでなし、人生というもの山あり谷ありであることが刺激的で面白いのである。まさに「祇園精舎の鐘の声」である。

アレクサンドル・グラズノフ。
1890年代初頭のスランプを抜け出し、以降数々の名作を生み出す中、1904年には唯一のヴァイオリン協奏曲を生み出す。何ともいえぬロシア的な仄暗さの中に、滴り落ちるような妖艶な響きが充溢する、そんなような短い傑作である。技巧的にも十分凄い。

時折聴くロシア音楽の底知れぬ深みに翻弄されながらも、ついついはまってしまう。
セルゲイ・プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲についても然り。

グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲イ短調
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調作品19
シチェドリン:スティヒラ
アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ指揮ナショナル交響楽団

シチェドリンのスティヒラという音楽にことのほか聴き惚れた。「ロシア正教の千年祭のための聖歌」という副題を持つこの楽曲は、まさに「闇があるからこその光の美しさ」を体現する。ムターのヴァイオリンもロストロの指揮も「光」そのものである。

目先に惑わされず、長い目で人生を見据えることって大切だ。いかに大変な時期であったとしても、あるいはそれが最悪の状況であったとしても、そんなことが長く続くわけでもなく、必ず物事は好転する。刹那的にならず、一時の感情に流されず、じっと堪えること。たまにはそういう「余裕」も必要だ。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>ロシア音楽が暗い
結局は気候風土、太陽の高さなんかも関係していますよね。でも、ロシア人は案外自分のことを「暗い」とは思ってないような気がします。
少なくとも最近の経済情勢からすると、豊富な天然資源に恵まれたロシアより、資源が乏しく、国民の勤勉さも、科学技術への関心も乏しくなり、国が自己破産しない限り未来永劫解決しない巨額の財政赤字を抱えた日本の将来のほうが、よほど「暗い」といえましょうね。
でも、「明るい・暗い」「幸せ・不幸」は絶対的な概念ではなく、あくまで脳内で作りだす相対的な尺度に過ぎません。早い話、縄文人の生活に比べれば、今の日本人の生活は、幸福の極みなのでしょう。つまり、「明るい・暗い」「幸福・不幸」の定義って考えようによって「何でもあり」なのだと思います。都会の夜だって、「明るい」とも「暗い」とも形容できます。モスクワの昼も、北極の昼よりは太陽が高く明るいでしょう。
ムターのグラズノフは未聴です。この曲、私は往年のハイフェッツや近年のヴェンゲーロフの録音で親しんでいます。この曲は、どうしてもロシア出身のヴァイオリニストで聴きたくなります。
>何ともいえぬロシア的な仄暗さの中に、滴り落ちるような妖艶な響きが充溢する
「007 ロシアより愛をこめてFrom Russia With Love」(1963)っていう気分です。
http://www.youtube.com/watch#playnext=1&playnext_from=TL&videos=ypOlYV-uVx4&v=TZ2gvbwdMNw
「ロシアより愛をこめて Matt Monro」
http://www.youtube.com/watch#v=er4FfGc9MQA&feature=related
資源のない日本が国際的地位を取り戻すには、勤勉さ、道徳心、科学技術、これらの復権なくしては、あり得ません。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>「明るい・暗い」「幸せ・不幸」は絶対的な概念ではなく、あくまで脳内で作りだす相対的な尺度に過ぎません。
同感です。
先日、晴香さんの講演に伺ったとき、彼女が面白い統計を出されていました。他の国からみた日本の幸せ度は確か10位以内に入っているものの、日本人自身が自分たちが幸せかどうかというアンケートでは78位だったかなんかだというものです。
つまり、客観的には幸福な国に見えているものの、主観的には決して幸福だとは思っていないというのが「日本」という国の特長だというのです。日本人はやっぱり「ムラ」社会で生きてきましたから、人と比較して比較的に考える癖がついているのかもしれません(もちろんそうでない人もいますが)。
「ロシアより愛をこめて」!ショーン・コネリーかっこいいですよね。
>日本が国際的地位を取り戻すには、勤勉さ、道徳心、科学技術、これらの復権なくしては、あり得ません。
同感です。

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