This scherzo is a joke

新年も滞りなく過ぎ去る。
例年より静かなことから夜更けにひとり音楽を嗜む。
正月2日、チャールズ・アイヴズをあらためて聴く。
室内楽曲と声楽曲を集めたコンピレーションものだが、アイヴズの音楽の様々な引用の一端が垣間見れて真に面白い。ソナタ第4番の例の「タンタンタヌキ」などは耳にした瞬間思わず笑みがこぼれるが(歌曲「ダウンイーストからの子どもたちの時間」も同じ旋律を使う)、この曲、原曲は讃美歌らしい(聖歌687番「まもなくかなたの」)。
まずはピアノ三重奏曲から。4,5年という年月をかけて書き上げられたようだから相応の力作だと思われるが、第1楽章の深刻な楽想からは当時の欧州の現代作曲家以上に前衛的で挑戦的な音楽家だったことが想像される。続くTSIAJ(This Scherzo is a joke.)と題された第2楽章は作曲家の「冗談」という言葉通り、まさにどこかで聴いたメロディがコラージュ風に継ぎ接ぎされ、何とも混沌とした中から突如飛び出す懐かしい旋律が(それはピアノで奏されたり、ヴァイオリンで奏されたり)特長的。フィナーレも少々長尺な印象が否めないが、知的でありながらどういうわけか親しみやすい音調が心を捉える。

アイヴズ:
・ピアノ三重奏曲
・ヴァイオリン・ソナタ第2番
・ヴァイオリン、クラリネットとピアノのためのラルゴ
・ヴァイオリン・ソナタ第4番「野外集会の子どもの日」
グレン・ディクティロウ(ヴァイオリン)
アラン・ステパンスキー(チェロ)
スタンリー・ドラッカー(クラリネット)
イスラエラ・マルグリート(ピアノ)
・余興
・ダウンイーストからの2本の小さな花
・ダウンイースト
・ダウンイーストからのサーカス・バンド
・ダウンイーストからの子守唄
・ダウンイーストからの子どもたちの時間
デボラ・ヴォイト(ソプラノ)

アイヴズは保険代理業経営の傍ら創作を続けた。
合衆国の都会的センスに溢れた数多の音楽は、どうにも我が故郷の田園風景に不思議にマッチする。本当は喧噪のなかで聴くと一層リアルなんだろうけれど、月明かりの(といっても今夜は曇り空で月は見えないが・・・笑)静寂の中でひとり孤独に聴くのに相応しい。
素敵だ。


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