やけにポジティブなピンク・フロイド!

ウォーターズ抜きでフロイドが再結成してアルバムを出すというニュースを聞いて卒倒した。あり得ない。その音をほんの少しだけ聴いてあまりの能天気さに呆れた。あくまで当時。それから数年が経過し、彼らが”The Dark Side Of The Moon”をステージで再現したビデオを観てほんの少し考えを改めた。いや、ちょっとばかし後悔した。冒頭の”Shine On You Crazy Diamond”にも涙が出た。
リック・ライトが鬼籍に入った今となってはどんな形であろうともはやフロイドの生は観ることはできまい(いや、”The Final Cut”の時にリックはロジャーにクビにされているのだから彼がいなくてもピンク・フロイドになるのかな・・・笑)。いずれにせよ、無念、である。

僕はロジャーなしのフロイドのアルバムはきちんと聴いたことがない。ましてや持っているとは思ってもいなかった(いや、厳密にはライブ盤である”p・u・l・s・e”は購入してビデオとともに繰り返し視聴した記憶があるからこの言い方は正しくない)。どういうわけかギルモア・フロイドが1993年に再始動した時にリリースしたアルバムを所有していたみたい。棚から音盤が出てきた(笑)。聴き込んだ?・・・いや、覚えがない。
(多分)初めて聴いてみた。良かった。ロジャー・ウォーターズ不在による「翳なる部分」が削ぎ落とされ、冒頭から極めて爽やかで、ギルモアのソロ・ギターがどうにも自由奔放に翔る様に笑みがこぼれた。まぁこれは、フロイドはフロイドだけれど、それまでのフロイドとは別のフロイドだ、と。そう考えてギルモア・フロイドに浸った。

Pink Floyd:The Division Bell

Personnel
David Gilmour (guitars, vocals, bass, keyboards and programming)
Nick Mason(drums and percussion)
Richard Wright (keyboards and vocals)

確かに”The Wall”以降のフロイドは不健全(?)だったから一般大衆をより取り込むためにはギルモアのこういう軽い(?)健全な路線の方が良かったのかも。
たまたまもう1枚ジェネシスの”Selling England By The Pound”を聴いていたものだから、ジェネシスでピーター・ガブリエルが脱退し、フィル・コリンズがイニシアティブをとるようになり、ポップ路線に走ってから飛ぶ鳥を落とす勢いでメジャーになっていったニュアンスと似たようなところを感じた・・・(いや、全然違うか、それは)。
それにしてもこの”The Division Bell”というアルバムはなかなかの優れもの。ひとつ前の” A Momentary Lapse Of Reason”は実質ギルモアのソロ・プロジェクトだったことを考えると、再生フロイドの最初のスタジオ・アルバムということになるからどうにも気合いが入っており、輝かしい。
この新生フロイドの一番の特長はやっぱり詩。それまではロジャーが主に作詞を担っていたことから後期フロイドの世界は極めて個人的な(ナルシスト的な)、時に病的な世界に覆われていた。そういう色が払拭されて良くも悪くも普通の、一般的な、恋愛や事象が歌われる。

やけにポジティブなピンク・フロイド!!(笑)病み上がり初期にはこういう音世界が実に心地よい。
インフルエンザにギルモア・フロイド!!何という組み合わせ!!
※一応プログレ・カテゴリーに入れてあるけれど、このフロイドはプログレなのかなぁ・・・、ちょっと疑問・・・。


2 COMMENTS

みどり

「アコースティック・プログレ」と呼ぶ方もおいでなので、プログレ枠で
大丈夫だと思いますよ。

入手直後であれば、「これはフロイドではない」と聴こえた可能性も
十分にあり得たのではないかと思いますから、
棚で温まっていたのが「正解」だったということでしょうね(笑)。

『コミュニケーションの欠如』をテーマにしたと言われるこのアルバムが
ポジティブに聴こえるというのは、今の岡本さんがポジティブで
いらっしゃるからだろうと思いますが、微熱の影響もおありではないかと
老婆心ながらご心配を申し上げます(笑)。

もう少しの辛抱です。きちんと静養なさって、しっかり復帰してください。

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岡本 浩和

>みどり様
なるほど、アコースティック・プログレですか。ものは言いようですね。

「コミュニケーションの欠如」がテーマになっている分、反語的にポジティブに聴こえるように思うのです。
ジャケットからしてそんな印象です。

>微熱の影響もおありではないかと老婆心ながらご心配を申し上げます

確かに幻覚幻聴かもしれません・・・(笑)
ありがとうございます。

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