Phineas Newborn Jr.:Harlem Blues

共演したドラマーのロイ・ヘインズ曰く、「10本の指と88のキーをフルに使うピアニストだ」

ジャズメンに麻薬や酒、あるいは女はつきものだろうけど、こういう壮絶なピアニストがいて、こんなにグルーヴィーで洒落たアルバムがあるとはついぞ知らなかった。
かれこれ15年位になるだろうか。とあるレコード会社に勤めている友人が、ジャズの名盤を、それも紙ジャケ・シリーズなるものを結構な枚数まとめて贈ってくれたことがあった。大抵のものはその時にじっくりと聴き込んだのだけれど、名前を知らないミュージシャンの録音は後回しになり、結局、1度も聴かないまま、封も開けないままになって棚に眠っているものが例によっていくつもあった。

日中、煙霧とやらの影響で外出もままならなかったので(どうしてもこなさなければならない用事があったのでそれにだけ出かけて)、ここぞとばかりに初めて(?)取り出してじっくりと聴いてみた。フィニアス・ニューボーンJr.なるピアニスト。知らなかった。
しかし、録音を聴き、類稀なセンスとあまりの上手さに驚嘆した。彼の名前をいろいろと検索にかけて調べてみると、なるほど知る人ぞ知る大ピアニスト。
ちなみに、フィニアスは強度の精神分裂症を患っていたようで、しかも60年代からアルコール中毒などで入退院を繰り返し、コンスタントに演奏活動がそもそもできなかったみたい。よって、これほどの力量を持ちながらいまひとつ知られていない。もったいない。

Phineas Newborn Jr. with Ray Brown & Elvin Jones:Harlem Blues(1969.2.12&13録音)

Personnel
Phineas Newborn Jr. (p)
Ray Brown (b)
Elvin Jones (ds)

何と言っても冒頭のタイトル曲からガツンと一発頭を殴られる感じ。トラディショナルをフィニアス自身がアレンジしたナンバーで、音楽を完全に自分のものにしているよう。まさに変幻自在。こういうノリの良い音楽もそうだけれど、例えば”Stella By Starlight”で魅せるムーディーでありながら、ヴィルトゥオーゾ的なソロを聴くと本当にオール・マイティーで、全部のキーをフルに使う人なんだろうと驚きを隠せない。
そういえば、ドラムスはエルヴィン・ジョーンズ。完璧に裏方に回っております(当たり前か・・・)。しかしながら、この軸のぶれない安定したドラミングはやっぱりエルヴィン!
素晴らしいアルバムである。たまには、こういうほとんど初めての音盤に浸り、悦に浸るのもよかろう。

人生というのは真に即興のようなものだ。その意味ではジャズ音楽に近い。
明日のことなどは予想もつかないし、瞬間を大事に生きるしかない。これこそ一期一会というのか・・・。それも、なるようになる、という想定で。

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