Yes:DRAMA

再び「思い込み」について。いや、「情報」という言い方でもいい。特に若いうちは何でもチャレンジせよとどこでも言われるが、年齢問わずどんな時でも「人の話」や「ひとつの情報」に惑わされず、自ら確かめるべく体感、体験した方が良い。脳裏にはおそらく「失敗した時の不安」が過るだろうけれど、実はリスクなんていうものは何もなく、「うまくいかないこと」すら経験として蓄積され、いずれ役に立つのだから「リスクを冒さない危険」の方が余程恐ろしい(すでにどこでもそのことは言われていることだが)。

話は飛躍する。僕がロック音楽を真面目に聴き出したのは大学入学以降。ビートルズに触れて概念が一変した。それまできちんと聴いてこなかったことをすごく後悔した。それから、流行モノも含めポピュラー音楽を種々聴いた。当時はMTVなるものが台頭し始めた頃で、ミュージックビデオが全盛の時代。あれらがまたすごく良かった。例えば、イエスも”Owner Of A Lonely Heart”で知った(懐かしい!)。当然、昔からのイエス・ファンであった友人たちからは「あんなのはイエスではない」と非難が飛んだ。そして皆口をそろえて”Fragile(こわれもの)”や”Close To The Edge(危機)”を聴けという。その通りにした。見事にはまった。それからはプログレ街道まっしぐら。一方で、”Drama(ドラマ)”についても彼らは同じように言及した。最低の代物だと。Jon Andersonのいないイエスはイエスじゃない、と。当然素人の僕は鵜呑みにした。耳にすらしなかった。

その後おそらく10数年、初めて聴いた「ドラマ」は鮮烈な印象を与えてくれた。もはやそれがイエスかどうかなんていう議論はどうでも良かった。ひとつのポップ・アルバムとして完成しているのだからそれでいいのでは?Jon AndersonとRick Wakemanが抜けた穴をバグルスの2人がよくぞ埋めてくれたとむしろ賞賛されるべき出来事なのでは?というより、イエスの重厚複雑でかつメロディアスな路線にTrevor HornとJeoff Downesのポップでキャッチーなセンスが見事に融合して、それまでとはまた違った音楽が現出しているのだから大絶賛すべき出来事だったはずだ。少なくとも前作”Tormato”などより余程格上の作品だと僕は思う。

それでも、理性を失ったフリークはこのイエスを批判した。この人たちが持っていたのは単なるイエスという「幻想」に過ぎないだろうに。「思い込み」は人から経験を奪う。

Yes:Drama

Personnel
Trevor Horn (lead vocals, fretless bass)
Steve Howe (guitars, backing vocals)
Chris Squire (bass, backing vocals, piano)
Geoff Downes (keyboards, vocoder, backing vocals)
Alan White (drums, percussion, backing vocals)

“Machine Messiah”のかっこ良さ!Trevor HornのJon Andersonにできるだけ近い声質を出そうと試みる姿勢が何とも涙ぐましい。それは、Peter Gabrielが抜けた後にPhil Collinsがとにかく頑張ったGenesisの”A Trick Of The Tail”の奇跡に近い。それと、厳密にはバグルスの作品だけれど、”Into The Lens”はSteve Howeのギターが入るだけでいかにもイエス風の音楽になるのだから面白い。ただし、やっぱりTrevorの歌声はJonとは異なるということがまざまざと確認できるのもこの曲。ヴォーカルが入ると突然バグルスに変わるから(笑)。それと、ラストの”Tempus Fugit”も大健闘の作品。だけれど、やっぱり少し「軽い」かな・・・。


3 COMMENTS

みどり

岡本さんが大学時代に先達のご友人の仰ることを鵜呑みにされたのは
「素人」だからではなく、「真面目」でいらしたからではないのですか?
そこで「そうは思わない」と異論を唱える程、プログレに関して理解して
いるとは、まだご自身で思っていらっしゃらなかったのでしょうから。

この“Roundabout”、既にご存じかもしれませんが…
http://www.youtube.com/watch?v=oOEqFznkpzY

笑ってしまいました。
Bobby Rockって同年齢なんですよね…で、この解釈かと。
ヴォーカルとキーボードのない「ラウンドアバウト」、新鮮でしょ?!(笑)

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岡本 浩和

>みどり様
確かに真面目でした、それとプログレにも詳しくなかったです。
問題はそれから20年近く経てから初めて耳にしたことです。
聴く機会なんていくらでもあったのですから。

ご紹介の”Roundabout”笑ってしまいます。新鮮というか何というか・・・(笑)

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