Yes “Drama” (1980) + Chris Squire “Fish Out Of Water” (1975)

如月小春は2000年12月7日、立教大学で講義後休憩中にくも膜下出血で倒れた。そして、意識不明のまま12月19日逝去。当時、交流のあったたくさんの現代音楽家が彼女に追悼の言葉を送っている。

高橋悠治は書く。

こんどはあなたとの別れのことばですか
   これはどうしたことでしょう
死ぬとはどういうことでしょう
  生まれてきて 死ぬまで生きることに
        どんな意味があるのでしょう

「とりあえずの別れ」
西堂行人+外岡尚美+渡辺弘+楫屋一之編「如月小春は広場だった 60人が語る如月小春」(新宿書房)P103

あるいは、坂本龍一は次のように書いている。

わからない
わからない
死んだ人のことは誰もわからない
彼が、彼女が何を思って、何を感じていたか、究極的には他人にはわからない
残されたものは黙って不在を受けいれるしかない
悲しいもんだ
生とはそういうもんだ

「如月さんと遭遇した」
~同上書P110-111

不思議なことに、二人とも何だかとても突き放したような言いようだが、とても悲しかったんだと思う。そこには如月小春へのただならぬ尊敬と愛がある。死とはそういうもんだ。高橋が言うように、確かに「とりあえずの別れ」だ。

今さらだけれど、否、今だからこそまったく違和感のないアルバム。
イエスでもバグルスでもない。しかし、実にイエス的な音響の中で、バグルスに負けずとも劣らぬ一層ポップな仕上がりに、僕は40余年を経て感動する。
ジョン・アンダーソンとリック・ウェイクマンの抜けた穴をトレヴァー・ホーンとジェフ・ダウンズが埋めた。トレヴァーは俄然頑張っている。むしろ、ジョン・アンダーソンよりジョン・アンダーソンらしい。

このアルバムを聴いて、クリス・スクワイアこそがイエスの要だったことがわかったという輩がいた。フロントマンであったジョンの代わりもいたということだ。正直、歌にまったく違和感がない。“Machine Messiah”の推進力! 前作“Tormato”からの楽曲を超える出来。来るべき情報社会を賞賛しつつも、起こり得る負の側面に警告を鳴らす。僕たちは今こそ変わらなければならない、否、自然に還らねばならない。素晴らしいとさえ思った。

・Yes:Drama (1980)

Personnel
Trevor Horn (lead vocals, fretless bass)
Steve Howe (Gibson Les Paul, Gibson Les Paul Gold Top, Fender Console pedal steel guitar and Fender Telecaster, Martin mandolin, Fender Stratocaster, backing vocals)
Chris Squire (bass guitar, piano, backing vocals)
Geoff Downes (keyboards, Fairlight CMI, vocoder)
Alan White (drums, percussion, backing vocals)

もちろんB面頭の”Into the Lens”も渾身の出来だと思う。
鍵を握るのはクリス・スクワイアだ。僕は、あらためてクリス・スクワイアの存在意義を確信した。

・Chris Squire:Fish Out of Water (1975)

Personnel
Chris Squire (lead and backing vocals, bass guitar, 12-string guitar, drums)
Bill Bruford (drums, percussion)
Mel Collins (tenor saxophone, alto & soprano saxophones)
Jimmy Hastings (flute)
Patrick Moraz (bass synthesiser, organ)
Barry Rose (pipe organ)
Andrew Pryce Jackman (acoustic and electric pianos, orchestration, conductor)
Julian Gaillard (strings leader)
John Wilbraham (brass leader)
Jim Buck (horns leader)
Adrian Bett (woodwinds leader)
Nikki Squire (backing vocals)
Alan White (drums)

クリスのベースが強調されたミックスで、彼がイエスで果たした役割を認識するのに大いに役立つ素材ともいえる。私的には(15分近くに及ぶ)終曲”Safe (Canon Song)”の壮大なスケールとクライマックスに向けての謙虚な(?)展開に言葉を失う。

過去記事(2013年3月11日)
過去記事(2017年9月29日)


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