レイ・マンザレク追悼 The Doors:In Concert

ドアーズの音楽はバロックだ。このバンドはベーシストを欠く。その代りにレイ・マンザレクのキーボードがその役目を果たした。慣れない耳には少々違和感があるかもだが、そのことがドアーズの音楽を一層「新しいもの」にした。
なるほど、確かにバロック期の音楽には通奏低音というものがあり、それをチェンバロ(すなわちキーボード)が受け持ったことを思い出すと、そう、あの感覚に近い、「古いのだけれど新しい」スタイルがドアーズそのものだった。
しかも、レイ・マンザレクの生み出すベース・ラインにあのジム・モリスンの色気のある声がうねるように乗っかるのである。もちろんロビー・クリーガーのギター・プレイやジョン・デンズモアの端正で的確なドラムスがあったこらこそ起こった奇跡であることは間違いない。不滅といわれるバンドの例に違わず、ドアーズも起こるべくして起こった「4人の奇跡」である。

レイ・マンザレク氏が亡くなった。享年74。
そうか、もうそんな歳だったか・・・。それはそうだ。ジム・モリスン死して早42年なのだから。

追悼ということでもないのだが、久しぶりにドアーズのライブ・アルバムを聴いた。
何と活気に満ち、何とリアルで、迫力のある演奏なのだろう・・・。
僕はある種偏見からジム亡き後のドアーズのアルバムは聴いていない(同じようにフレディ・マーキュリー亡き後のクイーンのアルバムも)。ツェッペリンがドラマーを失った時のように、稀代のヴォーカリストが逝ってしまった時にすぐさま解散すべきだったのだと今でも僕は信じている。

The Doors:In Concert(1968-1970Live)

Personnel
Jim Morrison (vocals)
Ray Manzarek (organ, keyboard bass, lead vocal on “Close To You”)
Robby Krieger (guitar)
John Densmore (drums)

それにしてもジム・モリスンのMCはいつどんな時も挑発的。例えば、”Gloria”の前のそれ。

Alright alright alright
Hey listen listen, listen man listen man
I don’t know how many of you people
Believe in astrology
(Are you a Sagittarius)
Yeah that’s right, that’s right baby
I’m a Sagittarius
(I love them)
The most philosophical of all the signs
(I know, so am I, I read upon them all the time)
But anyway, I don’t believe in it
(I don’t either)
I think it’s a bunch of bulshit, myself
But I’ll tell you this man, I’ll tell you this
I don’t know what’s gonna happen, man
But I wanna have my kicks
Before the whole shit house goes up in flames, alright alright

ジムは占星術など信じない、糞食らえだというが、それは本意か?
彼の音楽を聴いていて、これほど哲学的で深遠なものはないように思う。しかし、そのステージといい、言葉といい、醸し出す雰囲気といい、すべてが矛盾するかのように「反抗的」だったりする。
そういえばバロックの意味は「歪な真珠」というのが定説だ。となると、キーボードを通奏低音にしたドアーズの歪なロック音楽はまさに「20世紀に現れたバロック音楽の真髄」とでも表現してしまっていいのかも。

レイ・マンザレクが唯一ヴォーカルをとる”Close To You”が流れる。ジムのユニセクシャルな色気とは趣を異にするいかにも野獣的声質(ミック・ジャガーに近い)。なかなかのもの。

そして、ラストは”The End”。この破壊力は・・・、不滅(ヴェルヴェッツのそれと双璧)。言うことなし・・・。
ところで、ドアーズのアルバムは最後の”L.A. Woman”をのぞいてポール・A・ロスチャイルドがプロデュースしているが、彼はいわゆる「赤い楯」の人なのだろうか・・・。

 


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