ABQのバルトーク

恵みの雨、という感じ・・・。
また気温も下がって、こういう長雨は見方によっては鬱陶しいのだろうが、妙に気持ち良い。新しい年度が始まったことでもあり、古いものはこの際水にすべて流して、新しい視点、新機軸で進めと諭されているようで元気が湧くというもの。
急に、それも脈絡なく久しぶりにバルトークが聴きたくなった。
中世・ルネサンス系の宗教音楽を耳にし、バッハの世俗音楽を聴き、ふと最終形がバルトークなのではと閃いたから。たぶんそういうことだ。

何より均整のとれたそのフォルムが魅力。バッハ同様、大いなる計算は確かにあるだろう。でも、同じくバッハ同様、そこには計算による「不自然さ」がない。20世紀の音楽にある「近寄り難さ」というのもない。例えば、弦楽四重奏曲。生涯に結果として6曲が残されたというのも偶然なのだろうが(ほかに1899年の習作があり、死去前年の1944年に第7番の作曲を計画していたというが)、偶然とは僕には思えない。各々が個性的で、しかも時代の雰囲気がそのまま刻印されている音楽を、背景を知りつつ聴くと見事に知的好奇心がくすぐられ心が満たされる。
第1番は1907年~08年の作曲、第2番は第1次大戦中の作曲。そして第3番が1927年、第4番が1928~29年、さらに第5番が1934年、最後の第6番が1939年の産。2つの世界大戦にまたがって書かれたこれらの音楽は、まさに20世紀前半のヨーロッパ世界の明暗を包括する。

バルトーク:
・弦楽四重奏曲第1番イ短調作品7(1986.6.13-16録音)
・弦楽四重奏曲第2番イ短調作品17(1983.12.16-19&1984.4.2,3録音)
アルバン・ベルク四重奏団

僕はこの録音によってベラ・バルトークへの扉を開かれた。
先鋭的なアルバン・ベルク・クァルテットのバルトークは一向に古びない。
第1番は、2人の女性の間でゆれるバルトークの恋愛感情そのものが反映される。熱っぽく語りかける激情的なシーンあり、あるいは冷めた恋の、あまりに疑心の募るシーンあり。これほど人間っぽい音楽はない。
「ゆーきーはふるー、あーなたはーこないー」、思わずそういう旋律が頭を掠める(笑)第2番には大戦の暗い影。無調の影響もあり。そして、そこには作曲者の挑戦的な姿勢が垣間見える。
この時点でバルトークは他を圧倒する。バッハに優るとも劣らぬセンス。ただ、言語が18世紀のものから20世紀のものへと変わっただけ。200年という距離が2人の天才によって一気に縮まる。

相変わらずよく降る雨。
バルトークと雨音の妙なるコラボレーション・・・。慈雨なり・・・。


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