レオンハルトのビーバー&ステッファーニ

何事も全体観が大事。縦、横、高さという3次元的空間のつながり。そして、何万年に及ぶ時間のつながり。意識を四方八方に飛ばして感じてみる。音楽を理解し、楽しむコツはそこにあると僕は思う。
すみだ学習ガーデンさくらカレッジ「早わかりクラシック音楽入門講座」第3期第1回では音楽の父、ヨハン・セバスティアン・バッハを採り上げた。バッハの精密で奥深い世界をわずか2時間で解説し、視聴いただくというのは土台無謀な試みだが、音楽を学習する上で避けて通ることは不可能。なぜなら「平均律」を完成させた人だから。現代の僕たちがこうやって音楽を愉しめるのは、少し極端ではあるけれどバッハ様のお陰。そこで、ケーテン時代を中心にいくつかの映像を堪能いただいた。

バッハを知る上で同時代の他の作曲家についても知らねばならぬ。ということで次回はヘンデルにご登場願う。しかし僕はヘンデルには疎い。よって僕自身が勉強させていただくつもりで取り組む予定。

ところで、今夜はさらに掘り下げてみる。バッハやヘンデルより少し上の世代。ということは30年戦争まっただ中で、しかも黒死病、いわゆるペストが大流行し、ヨーロッパの人口が激減した時代の人。オーストリアの作曲家、ハインリヒ・ビーバー。「ロザリオのソナタ」は好きで時折音盤を取り出して悦に浸るが、この人の宗教音楽も素敵。バッハの峻厳で神々しい音楽とは様相を異にし、穏やかで健やかな音楽が鳴り響く。例えば15声のレクイエム

ビーバー:15声のレクイエムイ長調
ステッファーニ:6声の独唱、6つの弦楽器とオルガンのためのスターバト・マーテル
マルタ・アルマジャーノ、ミーケ・ファン・デア・スロイス(ソプラノ)
ジョン・エルウィス、マーク・パドモーア(テノール)
フランス・ホイツ(バリトン)
ハリー・ファン・デア・カンプ(バス)
グスタフ・レオンハルト指揮オランダ・バロック・オーケストラ&バッハ協会合唱団(1994.10録音)

このレクイエムの成立時期は1692年頃という(バッハはまだ7歳ということだ)。
死者を弔う音楽にしては明朗。しかし、得も言われぬ「静けさ」が全編を覆う。ビーバーはザルツブルク(かのモーツァルトを生んだ地である)で活躍した作曲ゆえ、おそらく土地柄というのもあろう。15年ほど前に僕も彼の地を踏んだが、こじんまりとした街並みと不思議な明るさに満ちた場所。その空気感まで表すような「癒し」の音楽・・・。金管の響きも幾分くすみがあり、決してうるさくならない。

そして、アゴスティーノ・ステッファーニの「悲しみの聖母」の妙なる美しさ・・・。

悲しみの母は立っていた
十字架の傍らに、涙にくれ
御子が架けられているその間

呻き、悲しみ
歎くその魂を
剣が貫いた

ちなみに、彼はハノーファーで活躍したそうだ。しかもヘンデルの師匠でもあるのだと。


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