the rolling stones:singles collection*the london years

ロック音楽の面白さは、いわゆる「愛」とか「平和」とかいわれる概念と「暴力」や「憎悪」などという概念が見事に同居するところ。クラシック音楽やジャズ音楽にだってそのことはあるのだけれど、ロック・ミュージックの場合はそのことがよりわかりやすく、かつ過激に提示される。特に、名曲といわれる音楽、あるいは天才といわれるミュージシャン、バンドにそれは著しい。

そう、愛も憎しみももとは一つだから。そして戦争も平和もやっぱり一つだから。それらがあって歴史があり、その歴史を作っているのがそもそも人間なのである。「愛」だけを語るのはちゃんちゃらおかしい。100年早い。とはいえ、醜い側面にだけ意識を向けるのも無理がある。人生は、否、歴史は山あり谷あり。それは良いことも悪いこともあるという意味でない。山にも谷にも都合の良い面もあれば不都合な面もあるということだ。すなわちどんな事象にも表裏が必ずあるということ。ゆえに二元論的視点に陥ると、善悪の呪縛から逃れられない。全部をひとつとして見れるような観点を獲得することが目標。

僕は1960年代のストーンズを愛する。70年代だろうと80年代だろうと、あるいは現代だろうとストーンズはストーンズで変わりないのだが、やっぱりあの頃が好き。そう、ブライアン・ジョーンズ在籍時のストーンズに一層のシンパシーを覚えるのである。

デッカ時代のシングル盤を集めた3枚組。
それこそ3時間余りを費やす初期ストーンズの集大成。これが何とも言えず、涙あり、愛あり、暴力あり、あるいは麻薬ありという代物。偉大なり。

the rolling stones:singles collection*the london years

Personnel
1963-1964
Mick Jagger (lead vocals, harmonica, percussion)
Keith Richards (guitar, acoustic guitar, keyboards, vocals)
Brian Jones (guitars, harmonica, vocals)
Bill Wyman (bass)
Charlie Watts (drums and percussion)
Ian Stewart (piano and organ)

1965-1968
Mick Jagger (lead vocals, harmonica, percussion)
Keith Richards (lead guitar, acoustic guitars, backing vocals)
Brian Jones (lead, rhythm and slide guitar, harmonica, organ, marimbas, sitar, dulcimer, recorder, bells, saxophone, harpsichord, Mellotron)
Bill Wyman (bass)
Charlie Watts (drums and percussion)
Ian Stewart (piano and keyboards)

1969-1971
Mick Jagger (lead vocals, harmonica, percussion)
Keith Richards (lead and rhythm guitars, vocals)
Mick Taylor (lead and slide guitars)
Bill Wyman (bass, vocals)
Charlie Watts (drums and percussion)
Ian Stewart (piano and keyboards)

先日、ドラマ「カラマーゾフの兄弟」で”Paint It Black”が鳴った瞬間震えた。
曲想も詩の内容も「カラマーゾフ」にぴったりだったから。これこそジャガー=リチャーズの傑作のひとつ。そしてイントロのブライアンによる哀愁を帯びたシタールの音色。何と彼はこの曲のためにシタールを勉強し、そしてそれによってよりスマートな奏法をマスターしていった。何より1965年から68年にかけてのレコーディングにおいてブライアン・ジョーンズの担当する楽器の多さに驚くほど。そしてそのまま彼は脱退、最終的に亡くなってしまうのだけれど・・・。

ブライアンはもがいていた。少しずつ自分の居場所がなくなりつつローリング・ストーンズという住処の中で自身のアイデンティティを確立しようと必死だった。しかし、もがけばもがくほど彼は疲弊していった。なぜならストーンズの中に彼の「存在意義」はすでになかったから。それは、亡くなってから発表された隠れた名作「ジャジューカ」を聴けばわかる。まさに今でいうワールド・ミュージックのはしり。第三世界の深遠な音楽を捉えるブライアンの感性はもはやロック音楽に収まり切らなかった・・・。

あと、”Jumpin’ Jack Flash”のB面でニッキー・ホプキンスがキーボードを弾く“Child Of The Moon”!!!これがB面とは思えない素晴らしさ。

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