高牧康さんから自著「『裏声』のエロス」をいただいた。ざっとまだ半分ほどしか読めていないが目から鱗。そもそもイタリア語であるファルセット(裏声)の語源が「偽りの」、「不正直な」という意味の”falso”と同じだということを知らなかったものだから驚いた(うーん、僕としたことが・・・)。
以下、同書前半より興味深い箇所を抜粋。
生殖行為と声との密接な関わり合いは、今日の男女の恋のあり方にも大きく関わっているようです。男女はまさに、声も睦み合うのです。
P16
メスは声を駆使して別の相手を呼び込み、乱交を続けることで優勢な子孫を残していたというわけなのです。
「よがり声」「もだえ声」「あえぎ声」・・・。そのときの声も、息の音や高音へひっくりかえった声などが混ざった「雑音の多い音声」でした。まさにそれが、裏声だったのです。
P20
私たちが「裏声」と称している声は、性差としての女性の声でもありますが、ジェンダーとしての女性の声、いわば女性的な、女性が得意とする、女声なのです。それを男性が真似ることが多かったので、ファルセットと呼ばれたり、仮声(作り声)と呼ばれたりしてきたと考えるのが妥当でしょう。
P29
社会において低い声で話すことを習慣付けられた女性は、いつしか公私共に、裏声を発することを忘れてしまうようになっていたのです。
P33
男女共に裏声は協調の声であり、そのルーツからも欠かせない声だというにもかかわらず、女性のそのときの声が太く低いと男性は威嚇され、追い払われているような錯覚を覚えてしまうのです。逆に男性側も、独占欲に満ちた太く低い声だけでは、くすぐりの笑いを得て安らぐことができないのです。
P34
もっと言えば、セックスしている最中だって連想、空想して、さらに高まりを覚えることがあるのです。ある意味、人間は脳でセックスしているのかもしれません。セックスレスの風にはまず、その想像力、空想力を取り戻してもらう必要があるのです。・・・(中略)・・・そんなときこそ、聴覚的刺激としての声を活用しましょう。
P38
なるほど、ここまで第1章を読むにつけ、「オペラを音だけで聴く」ことは聴覚的刺激による想像力向上のトレーニングにつながりそうだ。少子化の抜本的解決の糸口になるかも(笑)。
続く第2章は、裏声によりいかに「話術」を改善するかというテーマ。
正しい地声の訓練は、裏声を鍛えることから始まります。・・・(中略)・・・それは、裏声をソフトに出すことで、喉頭がほどよく下がり、地声を出しやすい環境が整えられるからなのです。
P43
その話術に共通することはまず、裏声にひっくり返りそうな、比較的高めの声で語っていることです。加えて、滑舌の良さにも魅力があります。この滑舌の良さも、裏声によって生み出されるものです。
P54
コミュニケーション体系のルーツから探ってみると、低い声を戒め、高い声を発するところに、敵意を好意に変える術が見出されます。
P64
以下、まだまだストレス解消編、健康編、歌唱上達編、音育編と続くが、「裏声」の真髄、効用がわかりやすく解説されている。これはお薦め!!
ところで、「裏声」、すなわち「ファルセット」といえば山下達郎。夏の終わりのこの時期にぴったり。
「アトムの子」から「Groovin’(グルーヴィン)」まで、一切の弛緩なく一気に聴かせる達郎マジック。僕の中では、この頃の達郎さんが最高だった。
とても勉強になった。高牧さん、ありがとうございます。
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