Todd Rundgren:Faithfulを聴いて思ふ

todd_rundgren_faithful本当の自分と偽る自分との境界線がわからなくなっている、そういう若者が増えているようだ。特に、長い間、他人の期待に応えようと頑張ってきた「優等生」に多い。「自分がどうしたいのかわからない」という。真にずるい。そういう人は実際は本音は無意識に把握できているはずだから。ただし、その本音というものを表に晒してこなかったがゆえ、どう対処していいのかわからないということらしい。結局怖がっているということみたい。
何も不安に思うことなどない。何も怖がることなどない。なぜなら「本物」と、いわゆる殻を被った「偽物」といわれるものに境界線などないのだから。どんなに取り繕たってわかる人にはわかる。それこそ嘘をつくのは取り越し苦労というもの。

ポピュラー音楽の世界にも、完璧にコピーした代物がある。確かに完璧である。しかし、オリジナルには決して敵わない。とはいえ、比べて云々する気も起らぬ。なぜなら、コピーと言えども誠心誠意、アーティストが命を懸けて創作したものだろうから。

トッド・ラングレンの異色アルバム。初めて聴いた時度肝を抜かれた。これらは明らかに偽物だった。でも、そんなことはどうでも良かった。むしろ、ここまで「本物」を愛おしむ心があることに感心したくらい。

todd rundgren:faithful

Personnel
Todd Rundgren (vocals, guitar)
Roger Powell (keyboards, trumpet)
John Siegler (bass)
John Wilcox (drums)

トッドがアルバムに冠したタイトルは何と”faithful”(忠実な、信義に厚い、誠実な)。過去の優れた作品に敬意を表していかに完璧に模するかをテーマにしたということ。彼は本気だったんだ。
オープニングはYardbirdsの”Happenings Ten Years Time Ago”。ジェフ・ベックとジミー・ペイジが同時に在籍していた頃の作品を採り上げるところがにくい。The Beach Boysの定番”Good Vibrations”の完成度は舌を巻く。The Beatlesの”Rain”も”Strawberry Fields Forever”も限りなく美しい。

やっぱり「本物」と「偽物」といわれるものに境界線などない。
優れた作品は誰がどんな風にやっても優れているもの。そこにその人の個性が現れるなら、また別の作品になり得るのである。
しかもこの録音はトッドのユートピアによって行われているというのがミソ。ユートピア、すなわちトマス・モアが掲げた理想国家を名にもつバンドが演奏しているということが鍵だということ。

10月の台風。10年に1度の大きなものなのだと。
大きな被害がないようお祈りしておく。

 


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