小澤のオッフェンバック「ホフマン物語」を聴いて思ふ

offenbach_hoffmann_ozawa秋深し。
どうにもメルヒェンと現実が錯綜する。まるで「ホフマン物語」。
モーツァルトに心酔したというオッフェンバックの音楽が素晴らしい。ある時はモーツァルト風の音楽を奏で、ついでに「ドン・ジョヴァンニ」からの引用も含め、さすがはオペレッタの神様、聴衆を飽きさせないメロディの宝庫(「アルプスの少女ハイジ」を思い起こさせるものも・・・、気のせいか・・・笑)。そして、不思議なストーリーと相まってあっという間の2時間半が経過する。

小澤征爾はあまり好きでなくて、特に若い頃は完全に無視していたのだが、このオッフェンバックだけは繰り返し聴いた(しかし若い頃の小澤の音楽の方がエネルギッシュで、むしろ今より音楽的魅力に溢れることを、チャイコフスキーの第4交響曲を聴いて随分損をしていたと反省。とにかくのけ反るほど吃驚したのだ)。とにかくどの瞬間も音楽がチャーミング。それとホフマン役のドミンゴの歌も見事なのだが、オランピア、アントニア、ジュリエッタの一人3役を務めたグルベローヴァの歌唱が一層最高なのである。
例えば、第2幕の有名なオランピアのアリア「生垣に小鳥たちが」の、ほとんど感情を殺しながら、それでいて実にホフマンを誘惑するようなエロスに満ちた表現をいとも容易にやってのける技術。奇跡に近い(笑)。もちろんスタジオ録音ゆえ、体調を万全に整えての歌唱だったろうから優れものであるのは当然なのだけれど。しかし、それにしてもこれは素敵。

オッフェンバック:歌劇「ホフマン物語」
プラシド・ドミンゴ(ホフマン、テノール)
エディタ・グルベローヴァ(オランピア、アントニア、ジュリエッタ、ソプラノ)
クラウディア・エーダー(ニクラウス、ミューズ、メゾ・ソプラノ)
アンドレアス・シュミット(リンドルフ、バリトン)
ガブリエル・バキエ(コッペリウス、バリトン)
ジェイムズ・モリス(ミラクル博士、バリトン)
ジャスティーノ・ディアス(ダペルトゥット、バリトン)
クリスタ・ルートヴィヒ(アントニアの母の声、アルト)ほか
フランス放送合唱団
小澤征爾指揮フランス国立管弦楽団(1986-89録音)

第4幕冒頭のジュリエッタとニクラウスによる二重唱「美しい夜、恋の夜」のうっとりする夢見るような響き。このあまりに有名な音楽の何とも陶酔的な響きにずっと浸っていたいくらい。それにしてもオランピアの時とはまた異質の歌唱をみせるグルベローヴァの巧さが光る。そして、第4幕終盤、ドミンゴ扮するホフマンのロマンス「何という陶酔」からグルベローヴァ扮するジュリエッタとの二重唱「今日は涙、明日は天国」のあまりに華麗で開放的な音楽は聴く者を釘付けに・・・。この後に続く語り、フランス語の台詞がまたお洒落・・・。

 


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