グルベローヴァ、マッティラ&ポップのR.シュトラウスを聴いて思ふ

r_strauss_orchesterlieder_popp_gruberova_mattila_mtt死期を悟った人の魂はとても純粋なんだと思った。リヒャルト・シュトラウスの「4つの最後の歌」を歌うルチア・ポップの、特に、第2曲「9月(ヘッセの詩による)」、第3曲「眠りにつくとき(ヘッセの詩による)」のヴォカリーズで歌われるパートを聴いて、涙が出そうになった。実に大らかで、とても慈悲深く、これぞ達観した人の境地だと思ったのである。技術的には、80年代初頭にクラウス・テンシュテットのバックを得て録音したスタジオ盤の方に軍配が上がるのだけれど、シュトラウス最晩年の老境をより一層確かに表現しているのはポップ生涯最後の録音に尽きる。もちろん本人はわかっていたはずだし・・・。ともかく一度きりのつもりで聴いていただきたい、まさに「一期一会」の記録なのである。

何と優しい音色であることか・・・。
何と崇高な調子に溢れることか・・・。
そして、何と透明なエネルギーであることか・・・。

どんな人にも短所があり、長所がある。多少のことでぶつかりがあり、相容れない点があったとしてもそこは寛容に。心を中庸に置いてさえいれば引っかかることはない。僕もあなたも、そして彼の人も此の人も、ご多聞に漏れず「死」を必ず迎える「生物」なんだから。ひとつなんだ。

リヒャルト・シュトラウス:
・ブレンターノの詩による6つの歌作品68
エディタ・グルベローヴァ(ソプラノ)(1991.2.6&7録音)
・献身作品10-1
・母親の自慢話作品43-2
・わが子に作品37-3
・東方から訪れた三博士作品56-6
・春の饗宴作品56-5
カリータ・マッティラ(ソプラノ)(1991.10.3&4録音)
・4つの最後の歌
ルチア・ポップ(ソプラノ)(1993.5.21&22録音)
マイケル・ティルソン・トーマス指揮ロンドン交響楽団

マッティラの歌う「献身」にシューベルトを感じた。若きシュトラウスの天才が如実に示される佳品。
何より素晴らしいのはグルベローヴァの歌う「ブレンターノ歌曲集」!!!参った。

清らかな夜よ、清らかな夜よ!
星のまたたく平和な夜空よ!
光が分けへだてていた
すべてのものはひとつに融け、すべての傷は
夕映えのなかであまく血を流している!

第1曲「夜に」に蠢く何というエロス!!44歳のエディタの官能・・・。
そして、第5曲「愛の神(キューピッド)」の、ついつい乗ってしまいそうな小悪魔的誘惑・・・。

火のそばにその子は座っていた、
キューピッドよ、キューピッドよ、その子は目が不自由だった
背中につけた小さな翼で
火を煽ぎ立ててほほえむ、
煽ぐのよ、ほほえむのよ、ずるい子よ!

シュトラウス・イヤーに聴く、3人の名ソプラノの、三者三様の歌唱が嬉しい。このところの座右の盤。

※太字歌詞は西野茂雄訳

 


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