パルマ王立劇場2012 ヴェルディ「アイーダ」を観て思ふ

verdi_aida_fogliani_regio領土というか土地というか、古来戦いのきっかけは大抵がそれだ。人間のエゴイズムの原点は地球の限られた大地や資源の奪い合いにある。そしてそのことは、21世紀の今も引き継がれており、いつ何時争いの炎が発火するかわからないような状況なのでは・・・。

連合国軍を優位にした、第2次世界大戦の転機となる「ノルマンディー上陸作戦」からちょうど70年。駆け引き、そして人間の愚かさが露呈される作戦前夜の詳細が興味深い。互いに相手の裏をかき、騙し、騙され。油断と予測ミスと・・・、歴史は人間の弱さを、そしてこの世界のシステムはあくまで勝利を得たものだけが優位になるのだということを教えてくれる。

久しぶりに歌劇「アイーダ」を観た。
ヴェルディ自身の、作曲当時の極めて個人的な心情により創作されたこの作品に蠢くのは人間の最もわかりやすいエゴ、すなわち三角関係に及ぶ愛憎だ。領土と同様、人間の興味の中心である恋愛。しかも、ライバルを貶め、蹴落としてまで相手の心までを奪おうとする身勝手さ。そして、死をもってでしか魂はひとつになれないという定石の踏襲。
よってドラマはとてもわかりやすい。しかし、何より重要で、何より素晴らしいのはヴェルディの音楽そのもの。イタリア・オペラ特有の開放的で明快な歌に溢れ、管弦楽の華麗な響きに僕は釘付けになる。

ヴェルディ:歌劇「アイーダ」
カウロ・マリンヴェルノ(エジプト王、バス)
マリアーナ・ペンチェヴァ(アムネリス、メゾ・ソプラノ)
スザンナ・ブランキーニ(アイーダ、ソプラノ)
ヴァルテル・フラッカーロ(ラダメス、テノール)
ゲオルギー・アンドグラーゼ(ランフィス、バス)
アルベルト・ガツァーレ(アモナズロ、バリトン)
ユ・ガンクン(巫女、ソプラノ)
コジモ・ヴァッサロ(伝令、テノール)ほか
パルマ王立劇場合唱団
アントニーノ・フォリアーニ指揮パルマ王立劇場管弦楽団
ジョゼフ・フランコーニ・リー(演出)(2012.2.1&5Live)

圧巻は何と言っても終幕のアイーダとラダメスの二重唱以降。歌唱の巧さも抜群ながら、当時のヴェルディ自身のプライベートな想いが反映されているかのような愛の成就に心が動かされる。

天が扉を開く
大地よ、さようなら
さようなら、涙の谷よ
苦悩のうちに消え去った幸福の夢よ
愛しい人よ
天が私たちに扉を開く

地下の2人の愛の語らいの上に地上のアムネリスの歌が哀しくも現実的に響く・・・。

とてもオーソドックスな舞台に安心感。一方、カメラ・ワークは心なしかシンプルで、動きも最小限、その意味では少々物足りなさを感じさせなくもない。その点、ゼッフィレッリ演出のシャイー&スカラ座の舞台は一層壮大かつ煌びやか。比較して云々する気は毛頭ないが、劇場によってお金のかけ方がこうも変わるのかという例だと思う。勉強になる。

 


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