モントゥー&ロンドン響のラヴェルを聴いて思ふ

debussy_ravel_monteux_kondon_symphony072何という意味深さ。何という生命力。繰り返し幾度となく耳にしたくなるほどの繊細さと美しさ。洒落た味わいの、そして実にセンス満点で濃厚なピエール・モントゥーのラヴェル。特に、「スペイン狂詩曲」の、絶妙なテンポ設定や楽器バランス、何より各々独奏楽器のニュアンスの美しさに心奪われ、涙する。

幼少期の母の歌うスペイン民謡にインスパイアされたこの作品に、人間誰しもの生の根源に在る母子の絆を確認する。音楽の内側に在る熱狂と、金管群の阿鼻叫喚、あるいは弦楽器群のたおやかな響きの背面には「生きることへの熱望」が秘められているかのよう。
第1曲「夜への前奏曲」冒頭の、FEDCisという4つの音の反復が耳について離れない。そして、その上に乗るように奏でられるエキゾティックな旋律が、人々の心を揺さぶる。
第2曲「マラゲーニャ」の、ミュート付トランペットの突然の雄叫びに金縛りに遭い、ここでも引用されるFEDCisという4つの音に釘付けになる。
第3曲「ハバネラ」の不穏な響きは、ラヴェルのドビュッシーの「グラナダの夕べ」への間違いなく挑戦状。
続く、第4曲「祭り」の、市場の情景の動的描写にモーリス・ラヴェルの天才をあらためて確信し、そしてこの音楽を実に軽快に、かつ活き活きと生々しく表現するピエール・モントゥーの力量に舌を巻く。ここはこの録音の白眉と言えるシーン。

ドビュッシー:
・牧神の午後への前奏曲
・夜想曲~雲
・夜想曲~祭り
ラヴェル:
・スペイン狂詩曲
・亡き王女のためのパヴァーヌ
ピエール・モントゥー指揮ロンドン交響楽団(1961.12.11-13録音)

ラヴェル自身があまり評価しなかったといわれる「亡き王女のためのパヴァーヌ」の、色香豊かなオーケストラの響きに感心し、独奏楽器の絶妙な歌に「スペイン狂詩曲」同様涙する。この曲が決して王女の死を悼む曲でなく、あくまで古を懐かしむものだということを納得させてくれるほどの、古びたセピア調の写真を思わせるが如くの「幻想性」にモントゥーのセンスを感じずにはいられない。
ドビュッシーの「牧神」、そして「夜想曲」からの2曲もいずれも目の前で演奏されるかのような新鮮さ。いぶし銀の如くの深い味わい・・・。

今年はモーリス・ラヴェル生誕140年の記念年。
昨年、没後50年を迎えたピエール・モントゥーの晩年の名演奏の名録音に身を委ね、夜が更けてゆく。

 

ブログ・ランキングに参加しています。下のバナーを1クリック応援よろしくお願いいたします。


日記・雑談(50歳代) ブログランキングへ


コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む