The Beatles “Let It Be”を聴いて思ふ

beatles_let_it_be173中世・ルネサンス、バロック期はいわば信仰の時代であり、一方、20世紀は科学の時代である。ここ数日、古と前世紀の音楽を交互に聴いて来て、音楽の源泉が森羅万象にあり、僕たち人間が宇宙や自然と一体となるために創造した道具が音楽なのではないかと考えた。
20世紀の天才たち。ドビュッシーもストラヴィンスキーも、そしてシェーンベルクもバルトークも、要は自然とひとつになるために(無意識に)格闘していたのだろうと僕は想像するが、数多の音楽的天才たちの中で群を抜くのは意外にビートルズなのではないのか。

ビートルズの内側には、まさに「バロック」がある。「歪んだ真珠が」その名の由来である「バロック」だが、20世紀最大の発明の一つである「ロック音楽」こそ「歪んだ真珠」そのものであり、その嚆矢となったのがビートルズなのである。彼らの音楽には、信仰を超えた真実が宿る。

リリース順では最後になったアルバム。

苦難のときには
聖母マリアが僕のもとに現われ
知恵ある言葉をかけてくださる
“あるがままに”

自然の境地を暗に示す”Let It Be”、そして宇宙がひとつであることを表わす”Across The Universe”。

何ものも僕の世界を変えることはできない

そして、「我(エゴ)」との苦闘が歌われる”I Me Mine”。

みんなが我がちにしゃしゃり出て
のべつまくなしにまくしたてる
朝から晩まで“俺が 俺が”

なるほど、人生のすべては長く曲がりくねった苦難の道なり。

君の扉へと続く
長く曲がりくねった道
それは決して消えることなく
たびたび現われては
この場所へ僕を連れ戻す
どうか君の扉へと導いてくれ

The Beatles:Let It Be

誰が何と言おうと、フィル・スペクターの化粧が施された”Let it Be”のオリジナル・ヴァージョンは素晴らしい。仰々しいまでの崇高さがこのアルバムを唯一無二のものにしていることは間違いないから。

ジョンとポールの掛け合いが見事な”Two Of Us”に答がある。

僕たち二人 あてもなく車を駆り
他人が苦労して稼いだ金を使う
君と僕 日曜のドライブ
目的地はまだ遠い・・・家に帰るところだよ

在るべきところに人は還るのである。
ポールはそのことを”Get Back”で再三訴える。

帰れよ 帰ったほうがいい
おまえがもともといた場所へ帰れ

ビートルズが空中分解せざるを得なかったのも当然と頷ける。
ある意味ポピュラー音楽の扉を開いた彼らは選ばれし者。

太字歌詞はすべてこちらのサイトから引用させていただきました。

 

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1 COMMENT

The Beatles “Get Back with Don’t Let Me Down and 12 other songs” (2021) | アレグロ・コン・ブリオ

[…] ところで先般、ビートルズの「レット・イット・ビー」50周年記念盤がリリースされた。中で、当時、グリン・ジョンズがミックスを手掛け、完成しながらも未発表に終わったアルバム「ゲット・バック」が収められている。海賊盤ではすでに定番化している有名なものだけれど、半世紀の時を経て正式にリリースされたアルバムは、やはり未完成の感が拭えない、どこか中途半端な印象を与える代物だが、それでもビートルズが当初想定したほぼ一発録りの生々しくソリッドな音楽を記録するという意味において成功しているように僕は思う(ただし、アルバム全体の印象としては従来の”Let It Be”が明らかにまとまりがあって、上)。 […]

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