“Sinatra At The Sands with Count Basie & The Orchestra”を聴いて思ふ

sinatra_at_the_sands219これぞエンターテイナー!!
ショーというのは、ただ単に歌が上手い、演奏が他を圧倒しているというだけでは突出し得ない。稀代の名ステージにはそれ以上の「何か」が必ずある。1966年1月と2月の、フランク・シナトラのカウント・ベイシー・オーケストラとのラスベガスでのライヴ・パフォーマンスには、その軽妙かつウィットに富んだシナトラの語り口に多くの聴衆が魅了される様子が見事に収録されており、とても勉強になる。50年近くを経た今聴いても壮絶なエネルギーの発露に驚くばかり。

I hope that you are having an enjoyable stay here in Las Vegas and also hope that you have been fortunate, I do wish that for you. I can’t say the same for Mr. Basie and myself because we run into a streak of bad luck. Sunday we went up to the Grand Canyon and it was closed. And last year we invested a bundle of money in a pumpkin farm and then they called off Halloween…

延々12分にも及ぶシナトラのモノローグの数々のジョークの秀逸さ。
観客にラスベガスでの滞在を楽しんむよう望むと早口で語るや、一方自分とベイシーを卑下しつつ笑いを誘う。
私たちは不幸続きで皆さんに向けるような言葉を自分たちに向けることはできないと。昨年かぼちゃ農場に大金を投資したのに、その後グランド・キャニオンの連中がハロウィーンを中止にしたものだから日曜日にあすこを閉鎖してきてやったと笑わせるのである。
さらに、親友であるディーン・マーティンにも言及し、彼ほどの酔っぱらいは、オリンピックの酔っぱらいチームを結成したら間違いなくコーチに就任するだろうと。

The question most asked of me is does Dean Martin really drink. Well I can contest to that fact, he’s a drunk. He is absolutely, an unqualified drunk. And if we ever develop an Olympic drinking team, he is gonna be the coach.

なるほど、「語り」こそある意味最高のプレゼンテーションであり、その日その場に居合わせる聴衆のハートを掴む上で最重要なファクターなのである。
大御所カウント・ベイシー率いるオーケストラを従え、シナトラはここぞとばかりに弾ける。その色気たるや並大抵でない。そして、すべての楽曲のアレンジと指揮を担当したクインシー・ジョーンズの天才!!最高のライヴ・アルバムである。

Sinatra At The Sands with Count Basie & The Orchestra
Arranged & Conducted by Quincy Jones

Personnel
Frank Sinatra (vocals)
Count Basie (piano)
Bill Miller (piano)
The Count Basie Orchestra

例えば、“Fly Me To The Moon”での、クインシー・ジョーンズの名アレンジに感嘆。続くカウント・ベイシー楽団のわずか1分にも満たない名インスト”One O’Clock Jump”の躍動感。あるいは、”All Of Me”の切なくも愛らしいピアノの旋律と管楽器のムーディーな調べに恍惚。
そして、Ervin Drake作の”It Was a Very Good Year”におけるシナトラの力強くもエロティックな歌声に感応。この後も続くシナトラの甘い歌声に言葉を失うほど。この日ここに居合わせた聴衆は本当に幸せだったろう。

人を鼓舞する、やる気にさせる、今後も決して色褪せないであろう名アルバムなり。

 

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