プレトニョフのドメニコ・スカルラッティ15のソナタ集(1994録音)を聴いて思ふ

scarlatti_sonatas_pletnev238夏至の日。
ドメニコ・スカルラッティの癒し。
バッハやヘンデルと同年に生まれたイタリアの巨匠のソナタは、マリア・マグダレーナ・バルバラ王女のために書かれたもので、そのいずれにも喜びや悲しみや様々な感情が刻印される。音楽の不思議は、演奏者の心が作品の心と同調すれば、その内奥に潜む感情が奔流、人と人とを直接に結びつける媒介となること。悲しい時には涙を流し、嬉しいときには心躍らせる。自然に還れ。

言葉だったら誰にでもわかるのに、音楽はあまりにとりとめがなくて、何を想像するよう求められているのかわからずじまいだ、と人々はいつもこう愚痴をこぼします。私にとっては正反対に思われるのですが。
(1842年10月15日付メンデルスゾーンのマルク=アンドレ・スーチャイ宛手紙)
アンソニー・ストー著/佐藤由紀・大沢忠雄・黒川孝文訳「音楽する精神」(白揚社)P107

フェリックス・メンデルスゾーンの言葉に同意。音楽は言語の壁を超える。

ドメニコ・スカルラッティの革新。
555曲ものソナタのひとつひとつに垣間見る新しさ。どの音楽も明らかにスカルラッティだとわかる作風でありながら、どれひとつとして「同じもの」はない。すべてが個性的で、しかもすべてがひとつでつながるという奇蹟。

科学や哲学、そして芸術をも含むすべての知的探求の目的は、雑多なものの中で統一を探し求めること、あるいは複雑なものの中に秩序を探し求めることである。
~同上書P272

英国の心理学者ダニエル・エリス・バーラインによるこの言葉は重要だ。音楽の目的こそまさに統一と調和にあり、それはまさにスカルラッティのソナタによって体現される。ホ長調K.380は文句なく美しい。

ドメニコ・スカルラッティ:15のソナタ集
・ソナタニ長調K.443
・ソナタニ短調K.1
・ソナタト長調K.283
・ソナタト長調K.284
・ソナタロ短調K.27
・ソナタホ長調K.380
・ソナタイ長調K.24
・ソナタ嬰ハ短調K.247
・ソナタヘ短調K.519
・ソナタヘ長調K.17
・ソナタニ短調K.9
・ソナタイ短調K.3
・ソナタイ長調K.404
・ソナタニ短調K.213
・ソナタニ長調K.214
ミハイル・プレトニョフ(ピアノ)(1994.10.10-11録音)

音楽は軽快に跳ね、時に深沈とうねる。
プレトニョフのピアノは優しい。
そして、音の一粒一粒が意味深く、慈悲溢れる。
ドメニコ・スカルラッティのソナタは人類の至宝なり。

 

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