音楽の力

大自然の前に人間の力の小ささ、非力さを目の当たりにするようだ。
石原都知事が「我欲に走った日本人への天罰だ」と言ったとか言わないとか。いつどこでどんな文脈でお話されたか不明なのでその是非はともかくとして、言いたいことはよくわかる。
大地震、大津波に続く原発の放射能漏れ問題と災難は続く。こういう時こそ、落ち着いて冷静に対処、行動を心掛けたい。大事なのは、ただただひとつになって祈り、各人ができることを地に足をつけてやり切ることだろう。

地震後、ほとんどの予定がキャンセルになる(講師として出る予定だった明日のエンカレッジの講座然り、聴衆として参加する予定だった明後日の「ストレスゼロテクニック公開講座」然り)。お陰で自分を振り返り、こういう時でないと落ち着いて取り組めないことに時間と労力を費やせることがありがたい。先の心配をする人も多いが、僕自身は至って楽観的。なるようにしかならないから。それよりもやっぱり「今」を一生懸命に生きた方がよりベストだと思う。

音楽の力は偉大だ。そこに逃避するわけではないが、気持ちが和らぐ。もちろんどんな音楽でもいいわけではない。好きな音楽を繰り返し・・・。それでよい。

そこでひとつの発見。こういう非常事態にはどうもクラシック音楽は似合わない。同時代に生きるアーティストたちが創作した歌、音楽にただただひたすら耳を傾けると、決して今のような状況に遭遇している我々のために書かれたものではないのに、心や魂にまで響き渡る。歌われる歌詞もそうだが、何よりその「音」・・・。不思議なものである。

peter gabriel:scratch my back

gabrielはその名の通り天使のようだ。現代の救世主のようでもある。彼の生み出す音楽の力は人々を「あるべき道」に引き戻してくれるだけのものがあるのか・・・。それを「癒し」という月並みな言葉では表現したくない。もっと別の次元の、大いなる力が働いているような、そんなエネルギーだから。

昨年7年ぶりにリリースされた本作は、何とカヴァー・アルバム。David Bowieの”Heroes”で幕を開け、Radioheadの”Street Sprit (Fade Out)”で幕を下ろす全12曲は、いずれもがギターやドラムを一切排した重厚なオーケストラ・サウンドをバックに歌われる(原曲とは全く違ったアレンジで、gabriel色に染められたあくまでpeterのオリジナル作といっても良い)。彼自身による楽曲解説によると、その全てが「私的な作品」だという。

音楽の色合いは確かにそう。人間の弱さと、であるがゆえに謙虚に振舞うべきであることを暗に示してくれているような傑作。ただただ黙して聴くこと・・・。


3 COMMENTS

アレグロ・コン・ブリオ~第5章 » Blog Archive » Peter Gabriel:US

[…] 「正伝」は1988年に出版されたものだ。よって、今のところまだ実現を見ていないというのはかれこれ25年前のこと。2013年の現在だって現実にはなっていない・・・と思う。 そろそろまたピーター・ガブリエルが表舞台に出て来るころだろうか?(昨年、一昨年と連続でリリースされた新作はどちらもオーケストラをバックにしての変則アルバムだった。正統派ロック・アルバムの出現を今か今かと待つ) […]

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岡本浩和の音楽日記「アレグロ・コン・ブリオ」

[…] ほとんど月並みな言葉しか出てこないのだけれど。 ピーター・ガブリエルの “and i’ll scratch yours”を聴いて、やっぱりすべてはつながっていて、ひとつなんだと感じる。ピーターが触発されたアーティストはこれまで多数。若手や大御所や・・・、彼らの作品をピーターは”scratch my back”でカヴァー。そして、今度はお返しにと彼らがピーターの作品をカヴァーする。 そのいずれのアルバムにも大変な「愛」が溢れる。 […]

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