The Beatles “LOVE” (2006)を聴いて思ふ

beatles_love452確かにこれはビートルズの作品とは呼べない、単なるコラージュではあるのだけれど、それでも大本の楽曲の出来が別格であるため、聴後の満足感というのは相応にある。しかしながら、それを”LOVE”(愛)などと名乗ったりするものだから、余計に反発を買うのである。
「愛」は真理であり、神である。
ビートルズの出来事は神がかったものではあったが、愛そのものではないのだから大仰なるこのタイトルにはいささか違和感があった。

しかし・・・、待て。
これは「単なる」ではないのかもしれない。ビートルズの作品を知り尽くしたプロデューサー、ジョージ・マーティンとその息子のジャイルズがビートルズの作品を基に新たな壮大な楽曲を創造したのだと解釈することもできなくはない。別の側面からだとそういう見方もできる。

この世のすべてには必ず裏があることを知るべきだ。
表の世界だけで成り立つことは何もない。

The Beatles:LOVE (2006)

Personnel
John Lennon
Paul McCartney
George Harrison
Ringo Starr

すべてが自然の中にある。
そして、どんなことも決して難しくはないのだ。自身の使命に気づき、それを愚直に全うするならば。

ベートーヴェンやシュトックハウゼンを聴くと、「作曲というものは、こんなふうにやってしまえばよいのだ。感じたことを感じたままにあたりまえに云えばよい。そしてやりたい放題をやるべきだ。何もむずかしいことを考える必要はないのだ」という気がしてくるが、「サージェント・ペパーズ・・・」というレコードは、まさにそういう印象をぼくに与える。音楽が「面白い」か「つまらない」かの第一は、それを作った人の想像力の大小にかかっている。想像力には2つの面があって、オリジナリティがあることと、変化が多彩で、なおかつ個々が多岐にわたることだ。
八村義夫「シュトックハウゼンとレノン」
「音楽の手帖 ビートルズ」(青土社)P145

大いなる想像力の音楽の宝庫。多様な作品をわずかな期間に生み出した4人の奇蹟。
要は、やりたい放題やらせてもらえたという奇蹟。
それはもちろんジョージ・マーティンの存在が大きい。
あるいは、ブライアン・エプスタインの影響も。
そうやってあらためてこの”LOVE”を聴くと、その意味深さが心から理解できる。
感謝しかない。

 

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4 COMMENTS

雅之

>『音楽が「面白い」か「つまらない」かの第一は、それを作った人の想像力の大小にかかっている』

う~ん、今の私ならやはりこう言い換えたいです。

音楽が「面白い」か「つまらない」かの第一は、それを聴いた人々が面白さを発見できるかどうかにかかっている。

だって、ビートルズは音楽であり、ビジネスですから。

「パクリ経済――コピーはイノベーションを刺激する」カル・ラウスティアラ (著), クリストファー・スプリグマン (著), 山田 奨治(解説) みすず書房

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%91%E3%82%AF%E3%83%AA%E7%B5%8C%E6%B8%88%E2%80%95%E2%80%95%E3%82%B3%E3%83%94%E3%83%BC%E3%81%AF%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%92%E5%88%BA%E6%BF%80%E3%81%99%E3%82%8B-%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%A9/dp/4622079402/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1456009094&sr=1-1&keywords=%E3%83%91%E3%82%AF%E3%83%AA%E7%B5%8C%E6%B8%88

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岡本 浩和

>雅之様

八村さんは作曲家ですから、記事で採り上げた言もあくまでその観点ですよね。
当時、「サージェント・ペパーズ」は現代音楽作曲家にとっても大変な衝撃だったのだと思います。
それにしても360度の視点って大事ですね。
あるいは立場を変えた観点も。
雅之さんのおっしゃる通りだと思います。

ちなみに、採り上げた「音楽の手帖」は1981年の発行で、おそらくジョンが暗殺されたのを機に編集されたもののでしょう。特にジョンが亡くなってからはビートルズが神格化され、ロック音楽、つまりビジネスというカテゴリーを超えて、ひとつの芸術として捉えられていきましたから、その背景を考えると余計に様々な観点をもたないといけないかなと思います。

返信する
雅之

おっしゃるとおりだと思います。

そして「The Beatles:LOVE (2006)」という「作品」になると、もう疑う余地のない完全な「パクリ経済」かな(笑)。

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