学ぶときは委ねることだ。いっそのこと何も考えず、ただひたすら「やれ!」と言われたことを反復するのみ。
下積み時代、ジョン・コルトレーンは、幾人もの師の下でおそらく相当にハードな日々を過ごしていたのだろう。彼の天才は、素直に教わったことを繰り返したことだ。何よりその時間を楽しんで。
それ以前にモンクから教わっていたので、ファイブ・スポットの仕事には、すぐに入った。すでに「モンクス・ムード」で共演しており、もっと勉強したいというと、モンクが家に来いといってくれた。行って寝ているところを起こすと、彼はすぐにピアノの前に座って弾き始める。たいてい彼のオリジナルで、少しすると顔を見て促すので、彼が何をやっているか見当をつけながら吹き始める・・・うまくいくまで、何回も何回も同じ曲をやった。難しくて分からないところだけ、譜面を取り出して教えてくれた。モンクは譜面なしで教えるタイプだった。そのほうが気分がいいし、覚えも早かった。1曲に1日をかけることもあった。モンクと過ごした時間は、ほんとうに楽しいものだった。
(Jazz Review誌1959年)
~「ジョン・コルトレーン―至上の愛」(講談社)
セロニアス・モンクの下で、「シーツ・オブ・サウンド」という独自のスタイルを完成させたコルトレーンは、マイルス・グループに再加入し、ついに新しい道、すなわちモード・ジャズの扉をともに開くことに貢献するのだが、その同じ時期に録音、リリースされた自身のリーダー作品は、いずれも脱力の、ほとんど完成された美しさを持つ。うちの一枚。
John Coltrane with Red Garland:Soultrane(1958.2.7録音)
Personnel
John Coltrane (tenor sax)
Red Garland (piano)
Paul Chambers (bass)
Art Taylor (drums)
実に有機的な響き、名作”I Want To Talk About You”における確信に溢れるサックスの音にコルトレーンの自信を思う。
あるいは、前年の12月に亡くなったアルト奏者アーニー・ヘンリーに捧げた”Theme for Ernie”の哀しき透明感。コルトレーンのバラードの美しさが横溢する傑作だと僕は思う。また、ガーランドのピアノのイントロが可憐な”Russian Lullaby”における、コルトレーンの急速で激しいサックス・プレイに舌を巻く。すべての音が人間的でありながら、どこか聖なる境地に足を踏み入れようとしているよう。
「ソウルトレーン」を聴いて、クロード・レヴィ=ストロースの言葉を思う。
われわれの社会においては、音楽がある意味では神話の役割をひき継いだのではないでしょうか。
音楽には神も悪魔も宿る。
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コルトレーン、いいですよね。
私は、平日疲れて帰ってきて何かジャズを聴きたい時は、コルトレーンよりロバート・グラスパー を選んでしまいます。
Vol. 2-Black Radio
http://www.amazon.co.jp/2-Black-Radio-Robert-Experiment-Glasper/dp/B00E7Z7D2M/ref=sr_1_7?s=music&ie=UTF8&qid=1455795006&sr=1-7&keywords=%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%BC
決して自分が堕落したとは感じていなくて、くつろぎつつ「ジャズの今」を学び楽しみたい気持ちのほうが勝っているだけです。
>雅之様
もちろん堕落などとは思いません。
特に、コルトレーンは後期になる程気難しくなって気軽に聴くというわけにはいかなくなりますから、くつろぎつつという点ではぴったりだと思います。
ご紹介の盤は未聴ですので、聴いてみたいと思います。
ありがとうございます。