酒、チェット・ベイカー

chet_baker_with_fifty_italian_strings.jpg酒は百薬の長というが、ほどほどでないと逆効果になる。僕はもともと酒に弱い方だから、若い頃から決して飲める方ではないが、それでもその雰囲気が好きで、ほぼ毎日のように嗜む程度の酒量はこなしてきた。今では休肝日を設けているが、晩酌を楽しむことは多い。

ただし、一定量以上摂取すると眠くなってしまうというのが難点。ましてやちゃんぽんなどすると一遍にイッてしまう(苦笑)。

ミュージシャンの多くは、現実逃避という意味も多分にあったのだろうが、酒に強い、否、酒に溺れてしまう人が多かった。酒や麻薬というのは依存性があるから怖い。何事も度を越せば「クスリ」どころか「リスク」になってしまう恐ろしさがあるが、いわゆる芸術的天才諸氏にとっては、凡人には決してわからないような「悩み」があったはずだし、革新的なものを創作するために、酒に頼らざるを得なかったのだろうことは何となく理解できる。それで本望ならまるで肯定できるし、そのお陰で我々は後世の残る傑作を享受できるのだからありがたいと思った方がよい。

江ノ島、鵠沼海岸を訪れた。たいした量ではないが、僕にしては随分飲んだ。そして、眠くなった・・・。

でも、酒は覚醒させる力があるから、夜更けに妙に頭がすっきりしてしまうところがこれまた怖い。眠れなくなるのである。眠気を催すような音楽に浸ろうとチェットのアルバムを引っ張り出した。彼の声はアンニュイだ。

Chet Baker With Fifty Italian Strings

1959年、ミラノで録音されたこのアルバムはチェットの女性的な声色と滑らかで優しいトランペットの音色、そしてバックを務める弦楽合奏の音が見事に融合して、我々聴く者の心を癒してくれる。夜更けに濃い目のコーヒーを飲みながら、ますます覚醒してゆく自分自身と対峙する。何て素敵なひとときなのだろう。チェット・ベイカーは紙一重の天才だった。衝撃的な死を遂げたが、それがいかにも彼らしい。

2 COMMENTS

雅之

おはようございます。おいしいお酒は、つい飲み過ぎてしまいますよね。
>チェットの女性的な声色
>チェット・ベイカーは紙一重の天才だった。
同感です。元祖、草食系の儚さというか・・・(微笑)。
昨夜も少し書きましたが、
http://classic.opus-3.net/blog/cat29/post-144/#comments
岡本さんのブログに触発されまして、エレキギターを含む弦楽器の奏法について改めて調べています。調べれば調べるほど、現代一般的に正しい演奏の時代考証と信じられているクラシック音楽でのノン・ヴィブラート、ポルタメント無しのピリオド奏法が、好き嫌いは別として、弦楽器に流れるDNAを無視し奏者の本能と生命力を押し殺させ、低血圧の、捏造奏法にしか思えなくなってきています。この研究テーマについては、また、時々研究成果をご報告いたしまが、世間の常識を疑ってみることは、新しい発想のためにとても重要なことだという、これは好例になるのではないかと、確信しております。
エレキギターの奏法を調べているうちに、ギターと同じ六弦でEADGBE(ミラレソシミ)調弦の、シューベルトのソナタの名前でもお馴染みなのに現代ではすっかり忘れられた、アルペジョーネという楽器のことも調べたくなりました。
↓とても勉強になるサイトです。
http://arpeggione.web.fc2.com/
アルペジョーネもまた、チェット・ベイカーと同じく、中性的な音色で儚い楽器でした。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
>世間の常識を疑ってみることは、新しい発想のためにとても重要なことだという、これは好例になるのではないかと、確信しております。
おっしゃるとおりです。そう考えると「常識」って何なんでしょうね?何でも疑って自分で考え、研究することって大事ですよね。雅之さんを見習って僕もいろいろチャレンジしたいと思いました。
アルペジョーネ!!
これまた内容の濃いサイトですね。ご紹介ありがとうございます。僕も勉強してみます。

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