Brian Wilson Presents Pet Sounds Live in London (2002Live)を観て思ふ

brian_wilson_pet_sounds_live_in_london_dvd455ポップ・ミュージックの歴史に燦然と輝く名盤。
それは50年を経た今もまったく色褪せない。
23歳のブライアン・ウィルソンが心血注いで創造したアルバムを、60歳のブライアン・ウィルソンが若きミュージシャンたちを従えそっくりそのまま再現したロンドン・ライヴ。

ブライアンは語る。

僕の人生を寄せ集めてひとつにしたんだ。
僕の魂の声を聞かせたかった。
溢れる魂を皆と分かち合いたかった。

とても23歳の青年のうちにある想念とは思えない崇高さ。
そして、それまでのビーチボーイズの定番であった車やサーフィンをモチーフにした作品ではない作品を生み出そうとした青年は「自省」へとベクトルを向けた。
同じく彼は言う。

曲を通して人生と向かい合ったんだ。

そういう音楽が大衆の心を掴むのである。
そして時間と空間を超え、全世界どこでも受容され、人気の高いモンスター・アルバムと化した。初めて観た時も、あらためて今観ても、ライヴに触れる聴衆の熱狂に鳥肌が立った。そして、かなり不安定な音程でありながら、それがまた「老練」と映るブライアン・ウィルソンの歌に、そして一つの無駄もない名曲群にあらためて感動した。

Brian Wilson Presents Pet Sounds Live in London (2002.1.27-30Live)

Personnel
Brian Wilson (vocals, keyboards)
Jeffley Foskett (background vocal, guitar)
Nick Walusko (background vocal, guitar)
Probyn Gregory (background vocal, guitar, French horn, trumpet, keyboards)
Andy Paley (guitar, percussion)
Darian Sahanaja (background vocal, keyboards, vibraphone)
Scot Bennett (background vocal, keyboards, vibraphone, percussion)
Paul von Martens (sax, clarinet, flute, harmonica)
Bob Lizik (bass)
Jim Hines (background vocal, drums)
Taylor Mills (background vocal, percussion)

小1時間の幸福。
あのスタジオ作業でしか作れそうにない精緻な音をライヴで見事に再現する妙。
もちろんデニスやカール、あるいはマイクやアルがいないことは寂しい。
それでも、全曲をブライアンが歌い切るという奇蹟に感謝する。

「ペット・サウンズ」が登場するまでは、ポップ・ミュージックというのはただ単にかっこよく愉しいものに―少なくとも僕の若い心にとってかっこよく愉しいものに―過ぎなかった。歌の中に何か意味を見いだせるかもしれないなんて、考えたこともなかった。
そこに突如としてブライアンが登場し、僕は彼と同じような周波数の上に立ったのだ。彼の若者としての憂愁や、確信が持てないつらさ(我々はそれをしっかり共有していた)は、その高い、淋しげな声を通して、歌詞を通して、そしてまたサブリミナルなレベルにおいてその精緻な音楽を通して、僕に語りかけてきた。ブライアンが語っているのは「自分は十代であることを好む人間である」ということだった。僕らは二人とも、どこかよその場所に移ることを求めていた。僕がそのとき知らなかったのは、僕や、僕のような人間にとって、このアルバムは文字通りの生命維持装置であったというのに、「ペット・サウンズ」は一般には不満の声をもって迎えられたという事実だった。
ジム・フジーリ著/村上春樹訳「ペット・サウンズ」P20-21

なるほど、あの時代に、このアルバムの凄さを理解できた人は大変な疎外感を覚えたに違いない。
しかしながら、ここにはブライアンの、否、「ペット・サウンズ」を愛する人たちすべての人生の永遠が存在する。

ライヴ映像を鑑賞するにつけ直後の来日ライヴに触れなかったことを悔やんだが、何とこの4月にアルバム・リリース50周年記念来日公演がある。もちろん僕も駆けつける。果たして73歳のブライアン・ウィルソンの「声」はいかに?

 

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2 COMMENTS

雅之

ご紹介のDVDも未視聴です。入手し視聴してみたいです。

いつも私のつまらないコメントに親切なご返事をくださり感謝しております。
一連のブログ本文とコメントへのご返事というプロセスを通し、岡本様の思考法の根底に存在するバックボーンの一端が垣間見えてきてしまいました。そして、バラバラだったパズルに最後のピースがはまったように・・・。

コメント欄で、具体的には申し上げないことをお約束いたします。

しかし、私の推理が正しければ、社交辞令抜きに、それは真に素晴らしいことだと思います。

ありがとうございます。

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岡本 浩和

>雅之様

こちらこそ日々あちこち転々とする記事にコメントをくださり、ありがとうございます。
さすがに洞察力に長ける雅之さんですから、これだけやりとりを繰り返しているとバックボーンの一端が見えるんですね。どんな推理であろうと、おそらくほぼ正しいのではないかと思います。

それにしても素っ裸にされたようで恥ずかしいですわ。(笑)

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