扉を開けよう!

beethoven_argerich_sinopoli.jpgIf the doors of perception were cleansed, everything would appear to man as it truly is, infinite.
もし知覚の扉が浄化されるならば、全ての物は人間にとってありのままに現れ、無限に見える。
-ウィリアム・ブレイク

オルダス・ハクスリーは、この一節を引用し、「知覚の扉」というエッセー集を上梓した。そこで彼は、ドラッグによる幻視体験についてたびたび言及しているが、もちろんドラッグ経験のない僕にとってハクスリーの意図した「知覚の扉が清められる」ということが何を指しているのかはよくわからない。ただ、薬の力を借りずとも、「全てのものが自然体になり、永遠に見える」ようになる瞬間を感じとることは、決して特別なことではないと思う。教育や環境の影響により自分の脳に刷り込まれている「癖」を知り、勇気を出して人と直接に出会うという行動をしてみれば時空を超え、人と人とが「ひとつになる」ということがよくわかる。とはいえ、他者に依存してはいけない。あくまで「自分自身の問題」であり、その問題をクリアできるのは自分以外にいないからだ。そういう意味では誰も助けてはくれない。サポートを求めることはできても最後の行動は自分がせねば何も起こらない。

銀座で一仕事終え、散髪をしながらふとそういうことを考えた。頭で鳴り響く音楽はもちろんThe Doors。バンド名は、冒頭の詩の一節に因んでいるのだという。さすがに音の作りは古びてきてはいるものの、楽曲の良さやセンスは今の時代にも十分通用する。

ちょっと前に比べて暖かい。おそらく一時的なものだろうが・・・。
人に対峙するということはさすがに疲れるのか、今日は一日リラックスして過ごす。こういうときは若き楽聖の名曲に耳を傾けるのがよい。

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲ハ長調作品15
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
ジュゼッペ・シノーポリ指揮フィルハーモニア管弦楽団

まさに「知覚の扉」を清めるに相応しい音楽。僕は爽やかな微風が吹く第2楽章ラルゴをことのほか愛する。初めてこの曲を聴いたのは、グレン・グールドがゴルシュマン指揮コロンビア響のバックで録音したCBSソニーのLPによって。もう30年近く前の話。カップリングがモーツァルトの協奏曲第24番で、ともかく針が擦り切れるほど聴いた。はっきりとした記憶の中に残るグールドの弾くこの音楽は僕にとっての永遠。しかし、棚の奥深くに眠っているLPにはもう何十年も触れていない。残念ながらCD化された音盤も所持しない。聴きたくとも聴けない状況ゆえ、その次によくお世話になった音盤を久しぶりに取り出した(ひょっとすると以前のブログで採り上げたことあるかな・・・?)この曲に関しては以前アルゲリッチの実演を聴いたことがあるが、それはそれは素晴らしい演奏だった。


6 COMMENTS

雅之

こんばんは。
ベートーヴェンの若書きの曲っていいものが多いですよね。交響曲第2番などもそうですが、これらの曲は、若々しく颯爽としていて大好きですし、本当に名作だと思います。私も近頃ベートーヴェンは、中期より、初期か後期の作品を聴くことが多くなりました。歳ですかねぇ(笑)。
ところでこの演奏、今は亡き指揮者のシノーポリが懐かしいですね。でも、ここでの彼は存在感が薄く、シノーポリでなければならない必然は、あまり感じられませんね。アルゲリッチとの役者の格の違いが露呈しちゃったと思えます。私はシノーポリは、曲によっては嫌いではなかったのですが、ここでの彼はレコード会社の企画に利用され、ちょっと気の毒でした。
アルゲリッチには、全盛期のC・クライバーとの組み合わせで、一度でいいから協奏曲の共演を、せめて録音に残して欲しかったです。この二人、共演したことあるんですかねぇ?

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
ベートーヴェンの初期の曲っていいですよね。やっぱり歳ですねぇ。
>ここでの彼はレコード会社の企画に利用され、
なるほどそういう見解もあるのですね。僕はシノーポリに関してはほとんど真面目に聴いたことがないので何とも言えません。
92年にクライバーの代役で来日したときに聴いたことありますが、あまり感動しませんでした。(このときは確かNHKホールだったので、そのせいも多分にありますが)
あぁ、全盛期のクライバーとの組み合わせは面白そうですね。でも、おそらく共演はないんじゃないかと思います。
ところで、先日NHKで例の86年のクライバーの人見での来日公演の映像が再放送されたそうじゃないですか!多分僕が実際に接したコンサートだと思うので、思い起こすという意味でもどうしても見たかったのです。完全にミスしてしまいました!
誰か録画してないかなぁ・・・。

返信する
ぷみ

クライバーの演奏、VHSですが録画してますよ!まぁ、日本にありますが。。。

返信する
岡本 浩和

>ぷみ君
こんばんは。
何と!録画したんだ!
帰国したらぜひダビングさせてください。

返信する
雅之

ベートーヴェンのピアノ協奏曲の第1番や第2番は、最近プレトニョフの盤がお気に入りの愛聴盤なんだけど、どう考えても、ぷみさん好みじゃあないですよね(笑)?
岡本さんの
>92年にクライバーの代役で来日したときに聴いたことありますが、
うなぎを頼んだら、あなごが出てきたわけですね(笑)。でも、あなごも、よく味わえば、おいしいですよ(爆)。
>86年のクライバーの人見での来日公演の映像
僕も見たい~!

返信する
岡本 浩和

>雅之様
>うなぎを頼んだら、あなごが出てきたわけですね(笑)。でも、あなごも、よく味わえば、おいしいですよ(爆)。
うまいことおっしゃる!確かにシノーポリも決してダメな指揮者じゃないですからね。

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む