印象派モネの世界―森耕治&鍋島佳緒里 ~目と耳で楽しむ贅沢なアート空間

monet_mori_nabeshima_20160907637鍋島佳緒里さんの音楽を聴いてきた。
音楽が時間の芸術であること、そして泡沫の如く時間の儚さを思った。
クロード・モネの絵画に触発された即興演奏6曲、プラス、アンコールのドビュッシー。
ベヒシュタインの芯のある透明な音が光った。
ベルギー王立美術館の公認解説者である森耕治さんの解説は、とても自然体で良かった。何より小難しくない、モネにまつわる数々の裏話が面白い。勉強になった。

冒頭、森さんの解説によるとナポレオンとモネの共通点はセーヌ河を愛したことだと。
水を愛する人に悪い人はいまい。とはいえ、借金王モネの生き方はあまりに奔放だ。

ところで、共感覚といって音楽に色を見出す人がいる。
ドビュッシーの面影深い「印象、日の出」は、音楽が進行するにつれその色はオレンジから青白い光に変わっていった。これこそ即興の妙。
ちなみに、太陽の光とその動きを見事に表現し得たその絵は世間にはまったく受け入れられなかったらしい。19世紀後半、いまだ印象派というカテゴリーのなかった時代、モネはいわゆる前衛だったということだ。恐れずに我が道を進むその勇気に感謝したい。

印象派モネの世界―森耕治&鍋島佳緒里
~目と耳で楽しむ贅沢なアート空間
2016年9月7日(水)19:30開演
汐留ベヒシュタイン・サロン
森耕治(お話し)
鍋島佳緒里(ピアノ)
・モネ「印象、日の出」~鍋島「印象、日の出」
・モネ「ラ・ジャポネーズ」~鍋島「ジャパニーズ・ビューティ」
・モネ「グルヌイエール」~鍋島「フロッグ・アイランド」
休憩
・モネ「カミーユの死」~鍋島「ラメント」
・モネ「積みわら」~鍋島「田舎の風景―積みわら」
・モネ「睡蓮池」~鍋島「Water Lilies in the Twilight」
~アンコール
・ドビュッシー:アラベスク第1番

「ジャパニーズ・ビューティ」は「さくらさくら」や「赤とんぼ」の旋律が引用されたいかにも日本的風趣の音楽。そして、冒頭に、おそらくカエルの跳躍を音化したであろうファンキーな(?)「フロッグ・アイランド」に魅せられた。

後半最初は「カミーユの死」をモチーフとした「ラメント」。
そもそも僕はモネのこの絵を知らなかった。しかし、死後の身体の変容を無意識に捉え、そしてそれを見事に彩色していたモネに僕は強烈な衝撃を感じた。

しかし私は、深く愛した彼女を記憶しようとする前に、彼女の変化する顔の色彩に強く反応していたのだ。(クロード・モネ)

1879年9月5日に亡くなったカミーユは当時わずか32歳であったという。
そして、9月7日には葬儀が執り行われた(何と137年前の今日!)。
ここでの鍋島さんの即興は素晴らしかった。重い鐘を模した前奏に、実に旋律的な音楽がそれこそカミーユの変容と昇天を見事に表現する様。人は死してようやく美に至るのかと感じさせられた、そんな音楽。

続く、「積みわら」は、モネの言うかすかな光や気まぐれな風の様がとてもきれいに表現されていた。僕はどういうわけかロベルト・シューマンの「夕べに」と共通の、あの憧れとも哀しみとも言えぬ情感を想像していた。
さらに、「睡蓮池」にインスパイアされた音楽の夢心地。

森さん曰く、モネの絵はなるべく離れて、そして目を半分閉じて鑑賞するのがベストなのだと。目の奥でそれこそぼんやりとひとつに映像が結ばれるのである。
なるほど確かに、僕も今日はずっとぼんやりと夢の中にいたようだ。

音楽は時間と空間と共にあることをあらためて思う。
そして、絵というものにどれほど触発されることか。

 

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