なるほど、確かに言葉は不変であり普遍だ。
演奏されるたびに即興的にアレンジされ、幾度と繰り返される中で元の形を完全に失ってしまうことも多々。都度舌を巻きながらも唖然とし、また時に閉口するボブ・ディラン。
とはいえ、彼が世界に貢献したことは間違いない。愛と平和を希求したジョン・レノンがたとえ「ディランを信じない」と歌っても、彼の歌は不滅だ。おそらくビートルズ同様、この後何十年、否、何世紀も歌い継がれることだろう。
ここかしこにちらばっているひとよ
あつまって
まわりの水かさが
増しているのをごらん
まもなく骨までずぶぬれになってしまうのが
おわかりだろう
あんたの時間が
貴重だとおもったら
およぎはじめたほうがよい
さもなくば 石のようにしずんでしまう
とにかく時代はかわりつつある
(「時代は変る」”The Times They Are A – Changin’” 片桐ユズル訳)
動けよ、動け!
「時代は変る」は1964年にリリースされた。何と僕と同い年ということになる。それにしてもその詩にある不朽の精神に感動する。
お祝いだ。ノーベル文学賞だと。正直吃驚したが、実に適切だ。
今の若者はもはや知らないだろう”MTV Unplugged”を久しぶりにひもといた。
Bob Dylan:MTV Unplugged (1994.11.17-18Live)
Personnel
Bob Dylan (guitar, vocals, harmonica)
Bucky Baxter (dobro, pedal steel, steel guitar, mandolin)
Tony Garnier (upright bass)
John Jackson (guitar)
Brendan O’Brien (hammond organ)
Winston Watson (drums)
もう30年以上前のこと、あの独特のしわがれ声に最初抵抗を覚えた。それでも、意味深い歌詞の数々にほれ込み、聴き続けた結果いつの間にかその魅力の虜になった。
ママ このバッジをとってくれ
もうつかいみちがない
くらくなってきた、くらくて見えない
おれは天国の扉をたたいているみたいだ
(「天国への扉」”Knockin’ On Heaven’s Door” 片桐ユズル訳)
死に際に人が思うのはやっぱり母なのだろうか。
それにしてもディランはまるで死んだことがあるみたい。バンドの音が一層力強い。
そして、名曲”Like A Rolling Stone”は、ほとんどシュプレヒゲザングのように変容するディランの歌唱がミソ。この投げやりな歌が僕たちの心を鷲づかみにするのだ。堪らない。
おれは無名で
年齢は意味がない
出身地は
いわゆる中西部
そこでそだち おしえられたことは
法を守れということ
と おれの住む国には
神が味方している
(「神が味方」”With God On Our Side” 片桐ユズル訳)
さらに、若きディランが歌ったこの詩にあるように、神はずっと彼の味方だった。
ボブ・ディランは真に永遠になった。
君とよくこの店に 来たものさ
訳もなくお茶を飲み 話したよ
学生でにぎやかな この店の
片隅で聴いた ボブ・ディラン
あの時の歌は聴こえない
人の姿も変わったよ
時は流れた
~ガロ「学生街の喫茶店」山上路夫作詞
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音楽は風の中にあることを再認識させられました。
>雅之様
同感です。
ディランの受賞は賛否両論のようですが、僕は素晴らしい選択だと思います。
>ディランの受賞は賛否両論のようですが、僕は素晴らしい選択だと思います。
私も同感です。平和賞でもよかったかもしれませんが(笑)。
朝、何気にコメントしたのですが、まったく無意識のうちに村上 春樹のことを連想していたことに、後から気付きました。大昔に読んだ彼のデビュー作『風の歌を聴け』には、ディランの『ナッシュヴィル・スカイライン』や「くよくよするなよ」が確かに登場してたんですよね。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A2%A8%E3%81%AE%E6%AD%8C%E3%82%92%E8%81%B4%E3%81%91
シンクロ現象を人は不思議がるけど、みんな、ただ過去の体験を忘れているだけかも、です。
これも余談ですが、そういえば、あのころのレコ芸には、後ろの方に文芸評論の連載もありましたね。
>雅之様
>シンクロ現象を人は不思議がるけど、みんな、ただ過去の体験を忘れているだけかも
確かに!周囲は騒ぎますが、当の村上春樹さんはディランの受賞を一番喜んでおられるかもですね。
>そういえば、あのころのレコ芸には、後ろの方に文芸評論の連載もありましたね。
ポピュラー音楽評もあり、参考になりました。
[…] 昨年、ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したとき、正直驚いた。 彼の詩が果たして文学なのかという問いについてはいまだに賛否両論あろう。長きにわたって書き綴られてきたそ […]