またしても「ひとつになること」について

wagner_tannhauser_solti.jpgベンチャー企業の新人研修を請負っていると、ときに新人の「離職率」に話が及ぶ。A社はこの1年で全員が辞めた。B社は半分だ。それに比べC社は全員がお互い励まし合いながら頑張っている、など。確かに世の中全般やその業界の景況感そのものが働く環境にマイナス要因として作用することで、人はやる気を失くし、結果辞めてしまうことになると思うのだが、それって「景気」のせいだけなのだろうか?
従業員が明るく元気よく働く会社、離職率の極めて低い会社を注意深く観察してみると、明らかな点が浮かんでくる。
まず第一に、会社のトップに「愛」があるということ。人の言うことを素直に聞いてくれる。そして、怒る時はしっかり「愛」をもって怒ってくれる。だから、仕事上どんなに厳しくても、最後は受け容れてもらっているという「安心感」が常にある。
「つながっている」ことを実感する時、人は自分に対しても他人に対しても「優しく」なれる。会社のトップが率先して従業員との絆を深める態度と行動を忘れなければ、人が離れることは絶対にない。誰しもそういう社長、上司についていきたいと思うはずだから。言うは易し、行うは難しだが、組織を活性化するための最大の策は「関係の質」をいかに改善、向上させるかである。ポイントはそこに尽きる。

ワーグナー:歌劇「タンホイザー」(パリ版)
ルネ・コロ
クリスタ・ルートヴィヒ
ヴィクトル・ブラウン
ヘルガ・デルネシュ
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーン少年合唱団
サー・ゲオルク・ショルティ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ほか

物語の主題はワーグナーの定石どおり「女性の死、つまり愛による救済」。
長いこと棚の奥にしまわれ、埃をかぶっていた音盤を取り出し、第1幕から順番に流し聴き。ショルティの音楽は決して僕好みとはいえないが、この「タンホイザー」は真に名盤であると断言できる。
僕は第3幕の「巡礼の合唱」を聴くといつものけ反るくらいに身体中に戦慄が走る。言葉の意味より男声合唱の持つ「音の響き」(特に高域でのユニゾン!)にやられてしまうかのようにである。

償いと悔恨をとおして、われは主に受け入れらる、
わが心は主に仕え、主はわが悔恨に祝福もて栄誉を与え、我が歌は主にとどく。
恩寵の救いは悔恨に与えられ、救いはいつか浄福の安らぎに至る。
地獄と死にも不安とはならず、ゆえにわれは神にわが命の長きを称える。
ハレルヤ、ハレルヤ、永遠に。

問題はどこにあるのか?人が辞める時、あるいは人が集まらないとき、ともすると「外」に原因を求めるが、実際は「自分自身」の中に問題がある。本当に余裕を持って人に接せられているか?「我」に入っていないか?ちょっとした気の緩み(自己中心的になってしまうことも含め)が、自ずと現象に現れる。常に「自己反省」である。
銀座からの帰途、丸の内線の中で10年ぶりくらいにR社に勤めるYに遭遇した。こういう出逢いを大切にしたい。


4 COMMENTS

もっち

お疲れ様です。
営業でお客さんと接する時は特に「ひとつになる」ことを意識しています。
上司にも色んな人がいます。営業所のトップと社員みんなはお互いが鏡のように見えます。
それだけにトップの人の社員さんたちに対する距離感は重要だと思います。 
トップの人が距離をとると社員さんも鏡のように距離をとって、結果的に二倍の距離になってる感じがします。
トップのかたは部下たちとの馴れ合いを恐れているみたいです。
「馴れ合い」を恐れるよりひとつになれないことのほうが恐いです。

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雅之

おはようございます。
日本の職場環境は、この20年くらいで激変しましたよね。確かに以前は会社は社員に対する「愛」がありました。世界に冠たる自動車メーカーや、あらゆる人を救い、人々のあらゆる願いをかなえる「観音」に由来する社名を持つ光学機器メーカーなどが、率先して非正規社員を大量に寒い年末に斬るなどということは、私が社会人になったころには考えられない話でした。
一方で、社員の側も、会社への帰属意識が薄れてきたことも事実です。私が新入社員だったころは、社員旅行など喜んで行ったもので、親睦を深めるよい機会だったのですが、今は皆本当に嫌がりますよね。極力他人に干渉されたくないという意識は、若い世代ほど強くなっています。上司の「愛」も大きなお世話、といった空気も多く感じられるようになりました。
私自身も、やたら他人のプライバシーに干渉してくる田舎より、他人に全くといっていいほど無関心な秋葉原のほうが居心地がよく感じられることがあり、怖くなります。核家族化などの影響で、日本人の精神構造は、昔とは、すっかり変わってしまったんでしょうね。私の世代は、古い価値観と新しい価値観の、ちょうど境目のような気がします。
ご紹介の「タンホイザー」は、おっしゃるように真に名盤ですよね。コロやデルネシュといった歌手も素晴らしいですよね。
それにしても「タンホイザー」はエロい歌劇です。
よし!今夜は部下と、親睦を深めるために「ヴェーヌスベルク」に行くぞ!ヴェーヌスちゃん、待っててね!行く前にTELするから!(爆)

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岡本 浩和

>もっち
おはよう。営業がんばってるねぇ。
それにしても、セミナーを受講しておいて良かったね。今日のコメントのような「気づき」が新入社員の時点でもてるということは凄いです。
>「馴れ合い」を恐れるよりひとつになれないことのほうが恐いです。
まさに!
「リスク」を恐れるより「リスクを恐れて何もできない」ことのほうが余程恐いよね。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
おっしゃるように社長(経営陣)だけでなく社員側にも問題はありますね。僕は新入社員研修を通しながら最近つくづく思うのですが、トップが新人といっしょになってその場を共有しながら、同じように感じ、考えることが重要であると。
ほんとうに「ひとつになる」ことが求められていると思います。
これは会社だけでなく、家庭においてもですが。
>し!今夜は部下と、親睦を深めるために「ヴェーヌスベルク」に行くぞ!ヴェーヌスちゃん、待っててね!
いってらっしゃい(爆笑)!

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