朝比奈隆指揮大阪フィルのヨーロッパ・ライヴ1975II(1975.10.4Live)を聴いて思ふ

そこにあるのは「感謝」の念。
一日でも長く生き、一度でも多く舞台に立つことを使命とした朝比奈隆の「想い」に溢れる言葉は、その音楽とともに尊い。

激しく流れるように過ぎた30日間でした。そして今は「有難うございました」という一語にすべては尽きます。
それにしても私達は何というしあわせに恵まれていることでしょうか。

朝比奈隆「ヨーロッパ公演を終えて」
GDOP-2002ライナーノーツ

堂々たる歩み。ただひたすら音楽に奉仕する指揮者と奏者の心通う再生。
スイスはモントルーの国際会議場での実況録音。
当時の大阪フィルの音は明るい。実際、ロベルト・シューマンの「マンフレッド」序曲は、デモーニッシュな色合いよりもむしろ天国的な愉悦に満たされた浪漫薫る名演奏。

ヨーロッパ・ライヴ 1975II
・シューマン:劇付随音楽「マンフレッド」作品115より序曲
・シューマン:交響曲第4番ニ短調作品120
・ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
朝比奈隆指揮大阪フィルハーモニー交響楽団(1975.10.4Live)

アインザッツがしばしばずれるものの、それがリアルで臨場感ある音楽として現出する交響曲第4番ニ短調。ムーサの沈思黙考する魔法。楽章を追うごとにその思念は一層充実度を増す。素晴らしいのは第3楽章スケルツォから終楽章にかけての思い入れたっぷりの熱さ、そして、終楽章冒頭の神秘。コーダに向けて突進する最中、思わず弦が先走る瞬間の危うさ、というよりリアリティ。

水にも空気にも、抽象的な匂いが瀰がっていた。すべては正確で、的確で、軒並の建物の輪郭までが実に正しく見えた。
「ジュネーヴにおける数時間」
佐藤秀明編「三島由紀夫紀行文集」(岩波文庫)P114

抽象的な音調が、明確な輪郭を伴い朝比奈隆によって再現される様に、観客は何を思ったのだろうか?アンコールの「マイスタージンガー」前奏曲終了直後の聴衆のため息と万雷の拍手に感動を覚える。

これは、日本のオーケストラが本場欧州に認められたまさにその瞬間の記録ではないのか。
自信をもって奏されたシューマンもワーグナーも、44年を経た今もいまだ燦然と輝く最高の出来。何より緊張感と集中力が見事。

楽団員達もそうした舞台から、7500キロを走り抜いた長くきびしい旅から、そして又、自分の眼で確かめたヨーロッパの国々の生活から、一人一人が何かをしっかりと抱きとめて来たと思います。それが大阪フィルの音として、少し宛皆さんにお伝え出来れば、それが私達の感謝の幾分の一かでございます。
~同上ライナーノーツ

ここにあるのは朝比奈隆の愛。

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