暖かい、というより暑い

mahler_furtwagler.jpg春というより初夏の陽気である。昨日と今日2日間例によって富士山の麓にある「フェザント山中湖」にて「新人合同合宿研修」。基本は「人間力」、コミュニケーションについて。そして「関係の質」の変革、つまり「自分以外の他者に意識を向ける」よう口角泡にして語らせていただいた。今回の新人のみんなは自己表現が極めて苦手なようで、何を考えているのか、何を感じているのか今一つつかめない。それでも最終的にはひとりひとり「良い顔」をしていたので、何やかんや言いつつも心にはズシンと届けられたのではないかと自負している。
十人十色。そして類は友を呼ぶ。こういう研修をしていると当たり前なのだが、毎回反応が違うのが面白い。「なるほど、そうくるか!」という反応を示してくれる輩がいる。あるいは「ほー、そういう風に感じるのね!」と感心するほど斬新な視点でモノを見ている若者もいる。いずれにせよ、相手にしているのは「人間」。結局は「受け容れて、認めてあげた時」にその人は力を発揮する。いろいろと不甲斐ない側面をもちつつも、それぞれが良いところを有している。各々の潜在的な能力を引き出してあげることが、われわれ「モノを教えることに従事する」人々が為さねばならない仕事なのだろう。あらためていろいろと考えさせられた2日間であった。

中央高速道が少々混んでいたおかげで、帰りが遅くなった。食事を終え、おもむろに「春」を感じさせる「切ない」音楽を無性に聴きたくなり、久しぶりに取り出したのが次の音盤。

マーラー青年時の現世賛歌、「さすらう若人の歌」を聴くと切ない想いに駆られる。

青い花よ、しおれるな!
小鳥は優しく甘い声で、緑の原っぱで歌っている、
「嗚呼、なんてこの世は美しいんだ、
ピイチク、ピイチク、ピイチク」と。

そして、20世紀を代表する大指揮者が残した意外なる傑作がエドウィン・フィッシャーを独奏者に迎えた「交響的協奏曲」。残念ながら第2楽章のみの録音だが、第2次世界大戦前、ナチス・ドイツによる暗黒の時代を案じさせる「苦悩」の叫びの如くの鬱積した感情が内に爆発する感動的な音楽として昇華されている。無駄のない簡潔な書法による「魂の叫び」。願わくば全曲を聴いてみたいものだ(全曲を収めた音盤はあるのだろうか?)。


3 COMMENTS

雅之

おはようございます。「研修」の講師、お疲れさまです。
「さすらう若人の歌」、私も大好きな歌曲です。青春ですねぇ。この曲集を聴くと、交響曲第1番「巨人」も聴きたくなります。
フィッシャー=ディースカウっていう人は、戦後の声楽界では、カラヤン以上の圧倒的存在ですね。私もこの人の歌唱は、その革命的功績を認めつつも、あまりのも上手すぎるのが時に厭味で、いつも好きなわけではないですが(シューベルトの歌曲やモーツァルト「魔笛」のパパゲーノ等)、このフルトヴェングラーの「さすらう若人の歌」など、マーラーの歌曲では常に最高で、批判の余地のない名盤ばかりだと思います。
フルトヴェングラー指揮のマーラーは、もっと聴いてみたかったですね。ナチスの問題さえなければ、もっとマーラーを振りたかったのでは・・・。マーラーとフルトヴェングラーは、人種を超えて、音楽に対する姿勢に似たところが多いと思います。
フルトヴェングラー作曲の「交響的協奏曲」は、私も全曲聴いてみたいです。作曲家としての彼には非常に興味があり、ちゃんとした新録音が、もっと欲しいところです(できれば全集で)。私はフルトヴェングラーの交響曲第2番が、その昔、故 柴田南雄氏が酷評していたのにも拘らず大好きで、作曲者自身の指揮による複数の録音のCDも全部集めましたし、それ以外に、G.A.アルブレヒト&ワイマール・シュターツカペレによる比較的最近のステレオ・デジタル録音のCDも時々聴いて楽しんでいます。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1795554
ブルックナーやシベリウスの影響も感じられる、ちょっと纏まりは悪いけれど、再評価されるべきいい曲ですね。
なお、この交響曲の朝比奈先生の有名な演奏は聴けていません。どんな感じですか?

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
そうですね、「さすらう若人」と第1交響曲は「対」ですからね。同じく僕も聴きたくなります。
>私もこの人の歌唱は、その革命的功績を認めつつも、あまりのも上手すぎるのが時に厭味で、いつも好きなわけではないですが
おっしゃるとおりですね。気持ちはよくわかります。それでもやっぱりディースカウは天才です。
>フルトヴェングラー指揮のマーラーは、もっと聴いてみたかったですね。
同感です。
フルトヴェングラーの第2交響曲、僕も好きで自作自演盤は全部もっています。初めて聴いたのはグラモフォンのLP盤でしたが、当時はよく聴きましたね。でも、もう何十年も聴いてません・・。すっかり曲想とか忘れてしまっています(笑)。
作曲家としてのフルトヴェングラーの作品に関しては残念ながら僕は疎いですね。良いものがありましたらご推薦ください。
ところで、朝比奈盤ですが、これは名演奏だったと記憶しています(笑)(長いこと聴いていないので記憶が薄れてしまっています)。朝比奈先生らしい愚直で無骨な表現がフルトヴェングラーの心情をぴたりと捉えているように思います。長い間廃盤でしたが、確か去年タワーレコードのヴィンテージシリーズで廉価盤で再発されていますよね。ぜひ聴いてみてください!おすすめです。

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