奇人変人ブルックナー

bruckner_mahler_3.jpg頑なに「殻に閉じこもってきた人」は直截的な交流を嫌う傾向があるのだろうか。そういう人に対しては、傷つきやすい子どもを相手に言葉の遣い方ひとつひとつに集中しながら、なるべく「もちあげるような」言い回しをしないと、突然ちゃぶ台をひっくり返すような行為に出たり、悪態をついたり、正常な思考では考え付かないような、あるいは思いもよらないような反応が返ってくることが多い。ある意味「自意識過剰」であり、「被害者意識」の塊。
それでも「愛情を求めているのだ」ということはよくわかる。ただ無尽蔵に「愛」を与えられる人間ならそういう人と「うまくやっていくこと」はおそらくできるだろう。ただし、そこには対等のエネルギー循環はない。Give and Giveであり、Take and Takeなのである。

子どもの頃に、しっかりと躾をしながらも、一方で「愛情」を十分に与えることは親の責務である。そのバランスが難しいといえば難しいが、基本はしっかりコミュニケーションをとる時間をもち、考えていること感じていることをお互いにじっくり話し合うことだ。そして、悪い時は悪いと叱り、良かった時は良かった時でしっかり褒めるという何でもないことがすべての基本なのだと僕は思う。

週末のクラシック音楽講座に向け、ブルックナーのことをいろいろ調べていくうち、この作曲家は相当「変人」で有名だが、何だか「殻に閉じこもりがちの自意識と被害者意識の強い」人だったんじゃないかと、思えてしょうがない。生涯にわたって恋心を抱いた女性たちは、ほとんどロリコンではないかと疑われるほどティーンエイジャーばかりだったし、自信のある自作に対しての度重なる改訂。さらには、結婚への願望同様、昇進と社会的地位向上についての執拗な欲求など全てがそういうことの表れであったように思えるのだ。あれほど崇高な「聖なる」作品を多く生み出した一方、敬虔なカトリック信者とは思えないほどの「俗物根性」丸出しの生き様。まぁ、そういうことすべてがアンバランスで面白いといえば面白いのだが・・・。

ブルックナー:交響曲第3番ニ短調(グスタフ・マーラーによる2台ピアノ編曲版)
トレンクナー&シュパイデル・ピアノ・デュオ
イヴリンデ・トレンクナー、ゾントラウド・シュパイデル(ピアノ)

僕は管弦楽曲のピアノ編曲版が滅法好きで、一時期集中的に蒐集したことがある。ブルックナーの交響曲のピアノ編曲版は今日採り上げたこの音盤以外に僕は知らないが、ともかく弟子でもあったマーラーの名編曲で、この初期(初期とはいえ第1稿完成時作曲者は49歳だった)の大作を2台のピアノで聴けるという喜びは何ものにも代え難い。どこで購入したのかはもう覚えていないのだが、値札には「279.00」という数字が書かれているので、ひょっとするとオーストリアで買ったのかもしれない(まだユーロになる前のオーストリア・シリングだった時代)・・・。
透明感のある音色と厚みのあるハーモニー。原曲のオーケストラ版とはまた違った意味でブルックナーの醍醐味が味わえる。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
ご紹介のマーラーによる2台ピアノ編曲のCD、未聴ですが、面白そうですね、聴いてみたいです。いろいろ、新鮮な発見が出来そうです。通好みの「第3」というのがいいです(笑)。
>奇人変人ブルックナー
>「殻に閉じこもりがちの自意識と被害者意識の強い」人
>ロリコン
>結婚への願望同様、昇進と社会的地位向上についての執拗な欲求
>「俗物根性」丸出しの生き様
だからこそ私は、そんな私たちと同じ人間の弱みを抱えていたブルックナーが大好きなのです。モーツァルトも、ベートーヴェンも、シューベルトも、マーラーも、ワーグナーも・・・、皆俗物で変人だから、偉大な作品を残せたのだと思います。芸能人って、そういうものじゃないでしょうかね? 彼等は「俗な行い」や「奇行」「愚行」を、一方で、みんな「芸の肥やし」にしているのだと思います。だから私たち平凡な一般人には一生かけても絶対不可能な、私たちの心を根底から揺り動かす、「芸術上の奇跡」を起こせるのではないでしょうか?
音楽家の聖人君子なんて糞くらえ、です!
わたしが両手をひろげても、
お空はちっともとべないが、
とべる小鳥はわたしのように、
地面(じべた)をはやくは走れない。
わたしがからだをゆすっても、
きれいな音はでないけど、
あの鳴るすずはわたしのように
たくさんのうたは知らないよ。
すずと、小鳥と、それからわたし、
みんなちがって、みんないい。
(金子みすゞ 作  『わたしと小鳥とすずと』より)

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>皆俗物で変人だから、偉大な作品を残せたのだと思います。
同感です。凡人には解せない行為が「芸の肥やし」になってるんでしょうね。
『わたしと小鳥とすずと』は僕も好きな詩です。

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