マルケヴィチ指揮ラムルー管の「レオノーレ」序曲第3番(1958録音)ほかを聴いて思ふ

beethoven_6_markevitch062実に激しい、しかも響きの充実した「レオノーレ」序曲第3番であることか。
イーゴリ・マルケヴィチの天才を刻印するベートーヴェン。かのムラヴィンスキー&レニングラード・フィルに負けずとも劣らぬ音圧。弦楽器はうねり、ティンパニがここぞとばかりに炸裂する。それでいて、その轟音は決して無機的なものに陥らない。
とてもスタジオでの作業とは思えないこの躍動感は一体どこから来るのだろう?

はい、レコーディングは大好きです。面白い仕事ですし、一般的に言って、録音をすることで、演奏の質を向上させることができると思います。オーケストラも他の録音を聴くことによって、技術的に向上することができますし、その点が大変面白く思っていることです。
(ヒアリング&訳:天露雄)
PROC-1168/71ライナーノーツ

マルケヴィチの言葉から想像するに、音楽をすることをただただ彼は愛するのだろう。
何より仕事を面白いと語る姿勢に感服。それは当たり前のことなのだが、一般的には決して当たり前でないゆえ。

僕はやっぱりベートーヴェンが好きだ。
どんなに多種多様な音楽を聴き漁ってみても、また、彼以前の傑作や彼以後の傑作にどれほど触れても、一時的に心を奪われるだけで最後は必ずベートーヴェンに戻る。崇高な精神と俗物根性の狭間を行き来しながら、最後は前人未到の神々の境地に至ったであろう50余年の果敢な挑戦。
そもそも「ハイリゲンシュタットの遺書」を超えたところから彼の悟りへの道が始まった。
その狼煙をあげる傑作が「英雄」交響曲。後半2つの楽章が尻すぼみ的で難があるといえばあるが、それも愛嬌というもの。いかにも人間らしいベートーヴェンのそれ以上ない創造力の発露。
マルケヴィチは燃える。

ベートーヴェン:
・「レオノーレ」序曲第3番作品72a
イーゴリ・マルケヴィチ指揮ラムルー管弦楽団(1958.11.26録音)
・交響曲第3番変ホ長調作品55「英雄」
イーゴリ・マルケヴィチ指揮シンフォニー・オブ・ジ・エア(1956.12.19-21, 1957.1.30録音)
・マルケヴィチへのインタビュー(1957.2.8録音)

どの瞬間も弾け、そして大いに歌う颯爽たる「英雄」交響曲。第1楽章アレグロ・コン・ブリオの壮絶な音楽はトスカニーニの衣鉢を継ぐ。コーダのファンファーレも原典通りに木管群に受け渡す解釈で、実に新鮮。また、第2楽章「葬送行進曲」は、どちらかというと重厚さを排除した明朗な音調で、聴く者を夢の世界に誘う。中で素晴らしいのはトリオの恍惚と激情の対比。イーゴリ・マルケヴィチは天才だ。

同オーケストラ(シンフォニー・オブ・ジ・エア)との共演で、これらの楽曲を録音できたことは、私にとりましても素晴らしい経験でした。事実、これらの録音は、大変誇りに思える出来映えであり、私が行ったレコーディングの中でも最も優れたもののひとつだと思っています。
(ヒアリング&訳:天露雄)
~同上ライナーノーツ

本人が太鼓判を捺すほどの自信作なのだから演奏がすごいのは当然のこと。

 

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3 COMMENTS

雅之

謹賀新年。旧年中はお世話になりました。本年もよろしくお願いいたします。

>イーゴリ・マルケヴィチの天才を刻印するベートーヴェン。

おお、これはまた辛口のベートーヴェンで来られましたね(笑)。私もご紹介の音盤で新年を清めます(笑)。

アルペンザルツ
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今年も辛口で行っていいですか? レッドカード一発退場覚悟で(爆)。

返信する
雅之

>コーダのファンファーレも原典通りに木管群に受け渡す解釈

昔実演する時研究していたのですが、あの演奏はよく聴くと、じつはトランペットの旋律を8分音符の連打で重ねて吹かせる改変をしています。

新年早々、早速辛口コメント失礼します(笑)。

返信する
岡本 浩和

>雅之様

あけましておめでとうございます。
辛口のコメントどんと来いです。いや、むしろ辛口を待ちます。
レッドカード一発覚悟で!(笑)

今回のマルケヴィチの「エロイカ」コーダについてもありがとうございます。
スコアもろくに見ないまま、耳で聴いただけでいい加減なことを書いてはいけませんね。
なるほどそういうことでしたか!
正直、いわゆる原典ともどこか違うなと思っておりましたが、トランペットが消えるように聴こえるので、原典なのだろうと思い込んでおりました。

本年もよろしくお願いします。

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