ひとりよがりのベートーヴェン

beethoven_adieux_gilels.jpg本日拙宅は「エルーデ・サロン」と化し、愛知とし子奏でるピアノの下、9組の親子が集い初の「音浴じかん」が開催された。原則満2歳までのお子様とお母さんのための癒しのプライベート・コンサート。赤ちゃんの感性はとにかくすごい。何でもわかっている。僕は下働きで外に待機し、お客様の案内係に徹したため演奏は全く聴いていないが、どうやら乳児はリストの音楽が苦手なようだ。いや、というよりロマン派の「左脳がかった」音楽が好きではないみたい。後で食事をしながらスタッフ・ミーティングをしたところ、リストの時に子どもが五月蝿くなり、何とドビュッシーの「月の光」の時に一番安定していたとのこと。うーん、楽想の違い、あるいは作曲家のその時の心情の差・・・。大人が失ってしまっているアンテナが赤ちゃんにはありそうだ。

本日の演奏曲は愛知とし子お得意の楽曲尽くし。
①ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
②クープラン:神秘の防壁
③ドビュッシー:アラベスク
④ドビュッシー:小さな黒人
⑤ドビュッシー:月の光~ベルガマスク組曲
⑥リスト:愛の夢第3番
⑦モーツァルト:トルコ行進曲
⑧ショパン:夜想曲第2番作品9-2
⑨シューマン:トロイメライ~子どもの情景作品15

次回は5月31日(日)。既に満席でキャンセル待ち。音楽の癒しを求めるお母さんは多いようだ。

昨日はベートーヴェンの弦楽四重奏曲第10番変ホ長調作品74「ハープ」を採り上げた。今日は同じくルドルフ大公に献呈された「告別」ソナタを聴くことにする。かつて散々聴き込んだバックハウス盤やハイドシェック盤もいいが、あえてギレリス盤を取り出した。久しぶりである。

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第26番変ホ長調作品81a「告別」
エミール・ギレリス(ピアノ)

いろいろな学説があるが、この音楽はやっぱり「恋愛」絡みのように僕は思う。生涯独身に終わったベートーヴェンだが、決して女性嫌いだったわけではないし女性にもてなかったわけでもなさそうだ。人一倍情熱的で、誰よりも猪突猛進型の恋愛パターンを繰り返した彼は単に思い込みが激しくひとりよがり的だっただけ。その性質がまた途轍もない作品群を生み出すのだから何が功を奏するのかわからない。
ベートーヴェンの革新性は逸脱ぎりぎりの線で留まりながら常に驚くような新しい音楽を生み出したこと。そして、彼のその時の心情がそのまま直接音楽に転写されるところがベートーヴェンのベートーヴェンたる凄さであり、単純さ(文字通りの「単純」という意味ではないですよ)なのである。そう、単純な中に革新があるのだ。そこに楽聖の天才がある。
しかし、ギレリスも実演の人なのかなぁ・・・。「鋼鉄の巨人」と称されたピアニストの割りに切味が「甘い」のだ。残念ながら例によって彼のライブには触れたことがないゆえ、その点を論じることは不可能だが、おそらくそうなのだろう。僕の後悔は実演に触れ得なかった大音楽家があまりにも多いということ。後の祭にならぬよう1回でも多く生の演奏に触れたい・・・。


2 COMMENTS

雅之

こんばんは。
私が最近の日本人ピアニストの充実ぶりと多士済々さに気づかされたのは、昨年、愛知とし子さんのリサイタルを聴いたことがきっかけでした。海外の一流ピアニスト以上に感動することが出来ました。
6月6日には小山実稚恵さんのリサイタルを聴きに行くんですが、
http://munetsuguhall.blog8.fc2.com/blog-entry-146.html
そもそも弦楽器やオーケストラが興味の中心だった私が、ピアノのリサイタルに積極的に足を運ぶようになったのは、紛れもなく愛知とし子さんのおかげです。9月の多治見でのリサイタルや今後発売予定の新録音CDを心待ちにしています。
「音浴じかん」は素晴らしい試みですね。確かに需要はもの凄くあると思います。愛知とし子さんの演奏を間近に聴ける赤ちゃんが羨ましいです(笑)。
ギレリスは私も実演に接したことがなく、彼の録音の熱心な聴き手でもないのでよくわかりません(「鋼鉄の巨人」なのにですね・・・笑)。
「告別」ソナタは、やっぱり愛知とし子さんに、満を持してレコーディングしていただきましょう!!
※ところで、前述の6月6日のリサイタルですが、メインの曲のブラームスのピアノ・ソナタ第3番は、私はあまり聴き込んだことがなく、よく知りません。1月にはレオンスカヤのCDを紹介されておられましたね。私はキーシンのCDで予習中なんですが、
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1972206
他に岡本さんのおすすめCDはありますか? 

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
>海外の一流ピアニスト以上に感動することが出来ました。
そこまで言っていただき光栄です。小山実稚恵さんのリサイタルのプログラム、なかなか意欲的ですね。面白そうです。
「音浴じかん」の試みは僕もイケるんではないかと思っているんです(笑)。どうやら子どもに限らず大人向けにもやって欲しいというリクエストがあるくらいで・・・。おそらくすぐに実現化すると思いますが(笑)。
>ギレリスは私も実演に接したことがなく、彼の録音の熱心な聴き手でもないのでよくわかりません
そうですか、雅之さんも聴かれていないんですね・・・。実際に実演に触れた方のご意見を聞いてみたいところです。
>「告別」ソナタは、やっぱり愛知とし子さんに、満を持してレコーディングしていただきましょう!!
ハハハ・・、頼んでみます。
ブラームスの3番は昔アシュケナージでよく聴いておりました(ひょっとすると既に廃盤かもしれませんが)。ただし、これはやっぱりアシュケナージですのであまりおススメはしません。
今なら、ウゴルスキ盤でしょうか。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1426715
ほんとはツィマーマンが録音したソナタ全集が手に入るならそれがいいのですが、廃盤になって久しく中古市場でも高額で取引されているようです。

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