大瀧詠一さんが亡くなって早3年余りが過ぎる。
彼の作った歌が、いなくなって一層普遍的であることを想う。それはもちろんパートナーであった松本隆さんの功績でもある。
あらためて素直であることの大切さを思う。
松本さんの詩はひねりがあり意味深なのだけれど、ある意味ストレートだ。類い稀な言葉の選択の中に、聴く者に情景を直接的に想像させる力がある。
固執するなかれ。そもそもすべては「当たって砕けろ」。失うものなんて何もないのだから。
想い出はモノクローム 色を点けてくれ
もう一度そばに来て はなやいで
美しの Color Girl
「君は天然色」
何という潔さ。
また、ナイアガラ・トライアングル(佐野元春、杉真理、大瀧詠一)の「A面で恋をして」におけるこれ以上ない愉悦。そもそも演奏する側が楽しんでいるという奇蹟。
A面で恋をして
ウインクのマシンガンで
ぼくの胸打ち抜いてよ
「A面で恋をして」
作詞家の意図は知らない。でも、表で明確に恋をしろという示唆はわかる。そう、隠すことなかれ。伝えろと。
あるいは、窮極の「さらばシベリア鉄道」。
哀しみの裏側に何があるの?
涙さえも凍りつく白い氷原
誰でも心に冬を
かくしてると言うけど
あなた以上冷ややかな人はいない
「さらばシベリア鉄道」
この歌のサビはご存じのようにこうだ。
伝えておくれ
十二月の旅人よ
いついついつまでも待っていると
嗚呼、身に染みる。
Eiichi Ohtaki:Best Always (2014)
大瀧さんの歴史を詰め込んだ3枚組。しかし、達郎さんが言うように、こんなもので大瀧さんのすべては語り切れない。
大瀧詠一さんとはどんな方だったのか、知りたいとおっしゃるのですか?
あなたにそれを説明するには、ゆうに三日三晩はかかります。
ですが正直申し上げて、私にはお話しする意欲があまりありません。
なぜなら、大瀧詠一さんという存在について、あなたに三日三晩、精魂こめて、
どんなに懇切丁寧にお話ししたところで、あなたが最後におっしゃる言葉は決まっているからです。
「世の中にそんな人間いるわけない!」
大瀧詠一さんとは、そのような方でした。
山下達郎
~SRCL8010-2ライナーノーツ
稀代の資料庫。学究的音楽人。底なしの天才。どれほど言葉を並べても、確かに表現し切れない人。本音を言うともっと聴きたかった。
そして、僕が当時イチコロになった「ペパーミント・ブルー」。
黙りこんだ貝殻が 深みできらめくよ
そう 大事なこと ぼくはまだ
話し忘れてたよ
「ペパーミント・ブルー」
なるほど、松本隆さんは鬱積の人だ。それを解放するのが大瀧さんの音楽の役目であり、妙。
まりやさんとのデュエット「恋のひとこと~SOMETHING STUPID~」が何だか哀しい。
まりやさんは想い出をこう語る。
昔から大のお気に入りだったフランク&ナンシー・シナトラ親子によるこのヒット曲をカバーするのなら、一緒に歌う相手は大瀧詠一さんしかいない、と決めていました。最初で最後のデュエットになろうとは夢にも思わず、スタジオで2人並んで声を発した時のあの嬉しさと感動は今でも忘れられません。
レコーディングの10年後に彼と会えなくなるとわかっていたならば、もっと一緒に音楽をやりたかった・・・。いつか達郎と3人で「ナイアガラ・トライアングル3をやろう」という計画が叶えられなかったことを悔やんでいます。
竹内まりや
~同上ライナーノーツ
人生は儚い。だから後悔のないよう時間を大切に。松本&大瀧コンビの音楽はそう言う直接的な交流の重要性を教えてくれているようだ。
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>想い出はモノクローム 色を点けてくれ
今、モノクロ写真をカラー化する技術は素晴らしく向上していますね。
↓ こちらなんかあまりに凄いので、感心して度々おじゃまして覗いてしまっています(笑)。
『 (´・ω・`)歴史的に有名な白黒写真をカラー化するプロジェクトが凄い!』
https://www.youtube.com/watch?v=qkGNm-Yx43A
>人生は儚い。だから後悔のないよう時間を大切に。
松本&大瀧コンビでは何といっても「1969年のドラッグレース」も外せませんね。この歳になると、とても心に沁みます。
・・・・・・DRAG RACE 1969
DRAG RACE 1969
走り過ぎる時間に 降りるドアも無いさ
アクセル深く ふみこんでみる
景色だけが変わり 未来が過去になる
君が言うほど 時間が無限に
無かったことも 今ではよく知ってる
だけどレースは まだ終わりじゃないさ
ゴールは霧の向うさ
DRAG RACE 1969
DRAG RACE 1969
まぶたの裏側を 夢が走り去るよ
アクセル深く ふみこんでみる
景色だけが変わり 未来が過去になる
>雅之様
カラー化プロジェクトすごいですね!!
これは魅力的です。ご紹介ありがとうgぞ会います。
おっしゃるとおり「1969年のドラッグレース」も素晴らしい作品だと僕も思います。
ただし、このベスト盤には収録されておりませんが。